パーパスブランディングとは?今、企業存続に必要な理由
近年、「パーパスブランディング」について議論される機会が増えました。「ハーバード・ビジネス・レビュー」でも特集され、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
AStoryでもPRサポートをさせていただく上で、必要不可欠な要素がこのパーパスです。
パーパスブランディングとは
パーパス
「『パーパス』(Purpose)は、日本語では一般に『目的、意図』と訳される言葉ですが、近年、経営戦略やブランディングのキーワードとして用いられることが多く、その場合は企業や組織、個人が何のために存在するのか、すなわち『存在意義』のことを意味します。」
by日本の人事部
すなわち、パーパスブランディング(Purpose Branding)とは、自分たちが社会で”存在する理由”を世間に認知してもらい、共感を得て、長期に渡って認識してもらうことでブランディングの強化につなげるという考え方です。
パーパスはビジョンやミッションを形成するための、根幹に位置する概念といえます。
それでは著名企業のパーパスを確認してみましょう。
GOOGLE 「世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにする」
HYATT HOTELS 「お客様が最善を尽くせるようにお世話をする」
P&G 「現在そして未来の、世界の消費者の生活を向上させる」
SONY 「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」
TOYOTA 「未来のモビリティ社会をリードする」
※パーパスという言葉を用いていない場合や一部抜粋もあります。
もちろん、私の古巣のAmazonにもパーパスがあります。Amazonのパーパスは「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」です。これがAmazonの存在理由です。その実現(お客様が満足する)のために事業をしており、その目的のためにAmazonは日々事業活動を行い、コミュニケーションしているのです。
もう少し具体的に説明しますと、Amazonでは存在意義を実現する手段として、「品揃え」と「価格」「利便性」をイノベーションで改善していくというミッションを掲げています。
例えば、
子育てと仕事で忙しいママや地方在住者でも、家にいながらにして何でも欲しいものが便利に買い物ができるサービス
お米など重い荷物を運べない高齢者に低価格で迅速な配達を実現する仕組み
といったシーンなどで、社会課題(=お客様が不便だと思っていること)への解決を実践しているのです。
パーパスに則った事業活動を積み重ねていくことで、社会では、
Amazon=便利、豊富な品揃え、低価格
といったブランドイメージにつながっています。実際にある調査をみても、お客様はAmazonの品揃えが豊富、低価格、利便性が高い点を評価しており、Amazonが尽力してきた事業活動やコミュニケーションの結果として表れています。
2020年はまさに「パーパスブランディング」が必要とされた年です。コロナや自然災害など予期せぬ事態(社会課題)が次々と起こり、社会からは解決への期待がとても高まっていますし、今後もますます社会課題を解決してくれる存在意義のある企業が必要とされるでしょう。
中小企業にパーパスが必要な理由
今後は、今存在する企業のうち70%は必要ではなくなり、淘汰されていくという意見もあります。
これは、「なぜこの会社が存続していかなければいけないのか」という明確な説得材料がない限り、消費者をはじめとするステークホルダーから支持を得られにくい世の中になるということです。
このことが意味するのは、既に広く認知されている大企業より、自社の商品やサービスといった取り組みの認知が弱い企業がより不利な立場になるということ。
だからこそ、自分たちがなぜ存在しているのかという理由を明確にし、そのための自社の商品づくりやサービス展開、そしてCSR活動を推進し世間にPRすることが企業存続の鍵を握ります。
その一方で、新型コロナウイルスにより、多くの企業が存続の危機的状況にあるなか、「パーパスが大事」といわれても素直に実践できない経営者の方は多いかもしれません。短期的な目先の売上に固執したくなるという考えが優先してしまうこともあるでしょう。ですが、ビジョンやミッションとは関係なく、仮に売上を一時的に上げるためだけに商品やサービスの価格を安くすれば、一瞬、お客様は貴社の商品やサービスを選んでくれるかもしれませんが、ほかにより安い店が出てくれば、価格以外の魅力を感じない限りすぐにそちらを選ぶでしょう。そして価格競争に巻き込まれて利益が出せず、泥沼化してしまうネガティブスパイラルとなります。
このような時期だからこそ、「自分たちの存在意義というものを見つめ直す機会」ととらえた企業に未来はあるのだと思います。
パーパスをはっきり提示し実践している企業は、従業員にとっても、自分たちの会社がどこに進もうとしているのか理解できるため、この混沌とした時代においてもすべきことが明快です。モチベーションも自ずと変わるでしょう。モチベーションを維持できるということは、個々の持つ能力が発揮できるということ。結果としてその企業が強くなるということに繋がります。
今回は当社のクライアントの事例として、ある飲食店の事例をご紹介したいと思います。一時的な値引き対策やコスト削減、従業員の解雇に着手する前に、自社におけるパーパスの再定義のヒントとなれば幸いです。
コロナ禍におけるパーパスブランディングの成功事例
岩手県産黒毛和牛を取り扱う「格之進」ブランドを展開している株式会社門崎様(以下、門崎)は、「一関と東京を食で繋ぐ 岩手を世界に届ける」をパーパスとし、「日本の食と未来を消費者と生産者と共にクリエイトする」をミッションに掲げ、「格之進」ブランドの熟成肉レストラン経営と食肉加工品の販売、卸、そして肉の啓蒙活動という4本の柱で事業を推進している企業です。
そして、地元岩手の生産者とWin-Winのビジネスモデルを構築していることが同社の特徴です。つまり、売上・利益のほかに「仕入れ額目標」を掲げ、売上の3分の1は地元岩手の生産物の仕入れに使うというモデルを構築しています。
門崎は今年、新型コロナウィルスによる緊急事態宣言が出る前に、既に格之進各店を休業させていました。その理由は、店舗の従業員とお客様の健康を考慮したものです。そして、店舗を閉めてただ手をこまねいていたわけではありません。
まず門崎が着手したのは、この環境下でビジョン、ミッションを継続して達成するためにやるべきことを考えたこと。どのように継続して生産者とWin-Winになれるビジネスモデルを推進できるか。
そこで考えたのが「おうちで格之進」という企画でした。この企画はご自宅でも格之進のレストランの味を楽しんでいただける様々なプロモーションやバーチャルなイベントです。
この一環で、「格之進オンライン肉会」という新しい肉を楽しむ体験機会を生み出しました。このバーチャルなイベントでは、イベント専用の肉セットを事前に購入した方々にzoomを使って格之進スタッフがリアルタイムで肉を美味しく焼いて食べる秘訣を伝授し、参加者全員で一緒にオンライン焼き肉会を楽しむ場を提供するという試みでした。まさに食を生産者と消費者と共にクリエイトするというパーパスをコロナ禍においても実践したのです。
そしてスタッフは、お肉の美味しい焼き方に添えて生産者の想いも伝え、また格之進を知らなかったお客様には門崎の理念や食を提供する姿勢を伝えることも徹底していました。
このイベントはリモートワークで人とのコミュニケーションが減るなか、大変好評を博しました。このイベントを通じて、生産者の思想についても知ることができます。リモートワークが普及するなか、社員のメンタル面での健康を心配する企業も増え、このような一体型オンラインイベントに需要が高まってきたのも追い風となりました。
このようなパーパスに則った活動が、多くの人の支持を得て、メディアにも共感を得ることができました。また、Twitterなどでお客様が広めてくれたり、応援団となって支援してくれたことも、格之進がビジネスモデルを推進する大きな原動力になりました。
今回の門崎の事例から学べることは、
なぜ今?
なぜそれを?
なぜあなたが?
というメディアのWHYにすべてパーパスで応えられるものであることです。
そしてもちろんそれぞれの施策にユニーク性があったこともメディアの露出に繋がった理由の一つですが、そこにはお客様の共感を得られる要素が多分にあったからです。
このように、コロナ禍においても伸びている企業は、このパーパスという揺るぎない軸を明確にしています。事業活動が制限されるなかでも、パーパスを掲げて説得力のある事業やサービスで世の中の共感を得ているからこそ、この時代でも選ばれ、支持されているのだと思います。
まとめ
存在意義を明確にし、正しいことをやり続ければ、お客様(世間)は必ず反応してくれます。
そして、企業のパーパス(存在意義)から”逆算”したものでないと、良い商品やサービスは生まれにくいのではないでしょうか。
この苦しい時期だからこそ、パーパスブランディングの実践は中小企業にとってチャンスです。経営が悪化していく企業や景気が失速していく状況を見続けたい人なんていませんし、メディアは社会課題に一生懸命奮闘している企業にスポットライトを当てたいという思いがあるのです。
そのメディアを通して、その先にいる社会の方々に、企業の想い(パーパス)をきちんと伝え、実現していく、継続していくことが、今重要なのです。
また、今後の日本を支えるZ世代やミレニアル世代といわれる若者層は、サステナブルな取り組みに対してとても敏感だといわれています。
これは顧客の対象として、モノやサービスを提供する対象としてだけでなく、今後、人材を採用する上で、そのような考え方ができていない会社に共感できないため、人材が集まらないということにも繋がります。
大事な経営資源である人材の確保にも、パーパスが重要であるということです。
現在、世界全体で3人に1人がこの世代であり、今後さらにその割合を占めていく彼らの層から支持されなくなることは、何を意味するのかは明白です。
自分たちはそもそも何のためにこの事業をしているのか。
一度見直してみてはいかがでしょうか?
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