パーパスブランディングの企業事例(IT企業編)

 

2022年を振り返り、パーパスブランディングのサポートを行ってきた企業のなかから、その実践例をご紹介します。

※パーパスについての説明記事:
「パーパスブランディングとは?今、企業存続に必要な理由」
https://www.astorypr.com/news-all/case/purpose-branding

 
 

業績好調ならパーパスブランディングは不要?

私が顧問を務めているアプリマーケティング事業を行うこの会社は、今年から本格的にパーパス経営及びパーパスブランディングをはじめました。

アプリ市場と言えばニーズが高い業界ですが、アプリマーケティング市場となると日本で本格的にサービスを提供している会社はまだそれほど多くないのが実情です。プレイヤーが多くない市場はメディアも積極的にとり上げないため、今後市場が伸びていく過程で、メディアにとり上げられる機会が増えていくだろうと見込んでいます。
その一方で、この会社はビジネスモデルが素晴らしく、私がご支援する以前も売り上げは堅調に伸びていて、実はあまりコミュニケーションをしなくても売れる会社ではありました。

ではなぜパーパスブランディングが必要になったのでしょうか。

 

まるで休眠しているかのようなサイト

私が初めてこの会社の公式サイトを見た時、休眠会社ではないかと疑ってしまうほど情報が少ないサイトでした。
広告やPRに頼らずとも業績好調だったこのスタートアップ企業にとって、チャレンジとなったのは「採用」が必要になってきた段階です。

そこで、成長基調にあり採用をどんどん推し進めていかなければいけない中で、長期的には企業ブランド価値を高めていく、短期的には求職者に正しく企業を理解していただくことを主な目的として、今年から本格的にパーパスブランディングを行いましょうということになったのです。
ほとんど情報を発信していなかった企業で優秀な人材を集めるためにも、世間にこの企業を知ってもらい、信用を得る必要があります。

そしてパーパスブランディングではその一歩を先ず「どこに向けるか」は非常に重要です。

 

先ずどこに目を向けるか

パーパスブランディングで先ず大事なのは「社内」です。
社内ファーストがパーパス経営では重要になってきます。

従業員の皆さんが、掲げられたパーパスに共感し「これが私たちが存在する意義だ。貢献する分野だ。」と思わない限りは、社外のステークホルダーに企業の姿勢が正しく伝わっていきません。

ブランド理論の世界的権威であるデービッド・アーカー氏の言葉に、「社員がそのブランドを信じて、すべての顧客接点においてそのブランドを実演しない限り、ブランドの約束は果たされない」(*1)というものがあります。

つまりそれはブランドの根幹にある社員一人ひとりの共感がなければ実現しないということです。
これは21世紀においてとても大事な考え方とされており、パーパスブランディングを実践する上で重要な鍵となるコンセプトです。

*1:関連記事「インナーブランディングを疎かにした高級ブランドから学べること」
https://www.astorypr.com/news-all/knowhow/luxury-brands-failing-at-inner-branding

 

パーパスを実践した社員は未経験採用だった

このスタートアップ企業のパーパスは「Think Out of the Box(既成概念にとらわれない)」というものです。
このパーパスを実行するためのバリューや行動指針もしっかりと定められていて、今年はこのパーパスを社内浸透させていきましょうと、主に社内イベントと自社メディアを中心に展開してきました。

この企業の素晴らしい点は、社長が社内コミュニケーションにしっかりコミットしていて、パーパスの策定から自ら中心となって社員を巻き込んで一緒に取り組んだことにあります。
特に私が感動したのは、直近の社内イベントで社長賞を受賞した人物から見えるパーパスへの本気度です。未経験のエンジニアとして入社したわずか1年程のキャリアだったこの社員は、まさに会社のパーパスを体現して社内で認められ受賞した方でした。

この会社は「Think Out of the Box」視点で未経験者にも門戸を開いており、「地頭」と「モチベーション」、「協調性」の3点で試験と面接をし、会社の”バー”を上げてくれるだろうと見込める人を採用しています。
社長賞を獲得した社員は文系出身の未経験エンジニアでしたが、ポテンシャルが高いと見込まれ採用された人物です。入社して約1年で賞に値すると評価されるほどまで能力を発揮したのは、パーパス経営がしっかり機能したからにほかありません。

 

パーパスを実践させるための斬新な試み

未経験者でも1年目から活躍できる理由の一つには、この会社の社員に対するサポート体制があります。

例えば、未経験のエンジニアをサポートするために「未踏(*2)」OBをを顧問アドバイザーとして迎え、エンジニアチームをリードしていただいています。また、ビッグデータ工学講座の准教授も顧問アドバイザーとして迎え、社内でゼミを開催するなど、エンジニアに早く成長してもらうための複数の施策を行っています。
パーパスを実践させるためには、このように社員にチャレンジできるフィールドと可能性を用意することも重要でしょう。

当初、この会社のウェブサイトには「オフィス移転のお知らせ」しか掲載されていませんでしたが、現在はパーパスブランディングによって強み分析などを実施し、パーパスから逆算したコンテンツをどんどん反映しています。その結果、エンジニアだけでも月に3桁の志望者がくるようになりました。
パーパスを軸に事業内容はもちろん、事例なども発信できるようになり、これらの取り組みを契機に認知が上がってきたことを実感でき、支援させていただいている当社としても誇りに思う事例でした。

 

*2:「未踏」は経済産業省所管である独立行政法人情報処理推進機構が主催し実施している”突出したIT人材の発掘と育成”を目的として、ITを活用して世の中を変えていくような日本の天才的なクリエータを発掘し育てるための事業。
※この未踏事業の修了者を未踏OBと呼んでいる。

 

スタートアップこそ実践してほしいパーパスブランディング

新しいビジネスモデルで社会課題を解決するスタートアップこそ、パーパス経営は実践されやすいでしょう。
しかし、急激な成長や規模拡大のなかで、パーパスの社内浸透が疎かにされることは少なくありません。

仲間となる人材の共感や投資家をはじめとしたステークホルダーの信頼を得るためには、経営者の力強いコミットと共に、パーパスの戦略的な追求は必要不可欠です。

パーパス経営を検討されている経営者の皆様、貴社独自のパーパスを実践してみませんか。

 
 

AStoryではアマゾンジャパンの黎明期からトヨタやGoogleを抜いてトップブランドとなった実績(「総合ランキングは、「Amazon.co.jp」が初の総合首位を獲得」)をもとに、ベンチャー、スタートアップ企業の新規上場におけるPR戦略立案やPR担当者育成のサポート、パーパスブランディングの構築支援をしています。

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