広報は見た!ジェフ・ベゾスのストーリー戦略【Ⅱ】

前回のジェフ・ベゾスの「ストーリーの作り方」に続いて、ジェフ・ベゾスの「ストーリーの伝え方」を元Amazonの広報としてジェフの言動を観察してきた視点からご紹介したいと思います。

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ジェフ・ベゾス式ストーリーの伝え方

詳細は拙著で詳しく解説しておりますが、ここでは主なポイント4つをご紹介します:

①伝えたいポイントを絞る

会う人、スピーチする対象に合わせ、最も伝えたい内容を絞ることです。人間はたくさん話を聞いても忘れるのが常です。皆さんも普段、著名な方の講演会やセミナーに参加されて、その時は講演者の話す内容に深く共感したり、気づきをメモに認めても、後になると思い出せないことは少なからずあるかと思います。

例えばジェフはお会いするメディアに対して伝える重要なポイントを常に決めています。もちろん色々な話に発展することはありますが、重要なポイントは何度も繰り返し伝えるのです。「今日は3つのポイントに絞ってお話しよう」と決めると話しやすいし受け手に伝わりやすいかと思います。

②ある場面を具体的に語る

ジェフ・ベゾスが実業家としてAmazonを成功に導いた要因の一つに、「後悔最小化構造(Regret Minimization Framework)」という考え方がありました。ジェフはAmazonを立ち上げる際に、本当にやるべきなのかを熟考するわけですが、その決断にこのフレームワークを使っています。

後悔最小化構造とは、「自分が80歳になり、そこから振り返った時にどの選択肢が、一番後悔が小さくなるか。」という、後悔を最小限にするための行動選択手法です。前回ご紹介した「Thinking Backward」を応用した思考ともいえますね。私も起業するときにこの後悔最小化構造を採用して進路を決定しました。
ジェフは話を聞いている相手が自分事として想像しやすいように話をするのが得意でした。

③例え話を頻繁に使う

ジェフは例え話を多用します。人はファクトとデータだけではすぐに忘れるものです。それらを並べるより、ストーリーを1つ話すことでぐっと印象強くなります。また、一般的にも印象に残る話のほとんどは例え話が盛り込まれています。彼の社員に向けた話のなかで私が特に共感したことの一つに、「才能を持っている人はその才能に喜ぶのはいいけれど、誇りに思ってはいけない。」という話があります。

「なぜならそれは、既に与えられたものだから。その才能をどう使うかという選択が大事。そのために努力したか?本当に優れた人は、才能と努力を組合わせることができる。」
才能は持って生まれたものだけれど、選択は自分でできることであり、努力である。自分の人生を振り返った時に、自分の努力(選択)に誇りが持てるように行動しましょう、という内容で、当時非常にエンパシー(共感)を感じた記憶があります。

④お客様にとって関係のない話はしない

ジェフの考え方に、「お客様の利便性に適っていることしか話さない。」というものがあります。実はこのポイント、広報としては困ったことでもあるのです(拙著ではその対処法を述べておりますのでご一読いただければ幸いです)。

例えば広報がメディアにアプローチする際、またはメディアの取材を受ける際には、自社の売り上げやマーケットシェアなどの数字を求められることが多いと思いますが、Amazonでは口外しないことが基本姿勢でした。お客様との長期的信頼関係を築く上で不必要な話を削いでいくと、その会社が伝えたいことがクリアになり、ブレのない印象を残すことができます。Amazonでは一貫した姿勢をジェフ・ベゾスやAmazonの社員たちが発信することで、お客様の意識のなかにAmazonのイメージを効果的に確立することができたといえるでしょう。


ストーリー化することでメディアアプローチが見えてくる

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Amazonの新規事業の企画書はプレスリリース形式でした。まさにお客様視点の未来プレスリリースです。例えば商品や新サービスの開発に関する会議の場合、事業開発担当者が”Thinking Backward”で顧客のニーズ&ウォンツを想定し、そこから逆算してその商品やサービスによってどのように顧客満足度が高まるのかについてストーリー化していきます。会議では、そのA4サイズ、1ページのプレスリリースをもとに本当にそれが顧客視点なのかどうかを精査していきます。短い文章の中で必要な情報を網羅するので、大変簡潔で分かりやすい資料になります。

このように顧客視点でストーリー化していくことで、「なぜこれが必要なのか」に対して明確な答えが出せるようになります。会社の一方的な事情で展開しているようには見えなくなります。仮に広報担当者の悩みとして、「プレスリリースを送っても読んでもらえない。」「メディア選定方法が分からない。」という声があったとしたら、”Thinking Backward”(逆算して考える)が効果的です。

そして誰に伝えるべきか明確になったら、不特定多数のメディアではなく、特定メディアの、さらにそのなかのコーナーや特定の記者を想定して企画書(ストーリー)を作るのです。

例えば、ある地方のメーカーが地元メディアにアプローチする場合、「地域のメディアは地域に関係することを報道する。」という地域メディアならではの特性を踏まえた上でストーリーを考えます。そのメーカーの商品やサービスが、その地域の誰にどんな影響が起きるのかまでを明確化することで、報道価値を感じてくれる(ストーリーが伝わる)メディアが見えてくると思います。

ストーリー化は顧客や社員、メディアだけでなく、様々なステークホルダーとのコミュニケーションに役立ちます。
AStoryではストーリー戦略を活用したメディアコミュニケーションのサポートも実施しております。ご興味のある方はお気軽にコチラへご連絡ください。