ブランド価値を高めるルートとは

 

良いモノを作れば売れた時代は終わりました。
でも厳密には、良いモノやサービスを作れば売れる会社はあります。AppleやAmazonのように。ではなぜあなたの会社のモノやサービスが売れないのか。
それはあなたの会社が、ブランド価値を高めるルートから外れているからかもしれません

多くの企業には、そのルートにつながる”ファーストステップ”が欠如しているのです。
今回は、AStoryのセミナーでご紹介している「ブランドのロイヤルティ(忠誠心、絆の強さ)を高めるメカニズム」の一端をご紹介したいと思います。

 
 

あなたの会社にアイデンティティはあるか?

あなたの会社の社員ひとりひとりに、「なぜ私たちはこの商品(またはサービス)を売るのか。」という質問をしたら、全員が同じ回答を出せるでしょうか?

冒頭に、「良いモノを作れば売れた時代は終わりました」といいましたが、実は、良いモノであっても、「あなた(企業)が何者なのかわからないところからモノは買われない時代」になったのです。つまり、会社に共感を持ってもらえなければ、モノやサービスを買ってもらえない時代です。この傾向は世代、特にZ世代以降に顕著だといわれています。

いくらプレスリリースのキャッチコピーに創意工夫を凝らしても、SNSでクリエイティブの予算をかけて宣伝したとしても、ただ「新商品発売」「新サービスリリース」だけでは”WHO”が見えてきません(注:ここでいうWHOとは、企業のアイデンティティのことです)。「私たちのブランドは○○という問題解決をするため、このような商品(またはサービス)を生み出しました。」という、WHOの意思(=ブランドプロミス)の見えないプレスリリースでは、メディアの心を打てず、また消費者からも選ばれないでしょう。価格訴求などで一時的に売れたとしても、それを長期的に維持するのは非常に難しいです。

モノやサービスを売っているその企業が、一体何を目指している会社なのか、どんな課題解決をしてくれる会社なのか。

これ、つまり「アイデンティティ」は、消費者が企業(ブランド)に共感するファーストステップです。

 

強いブランドを作る4段階ステップ

では、そのブランド価値を高めるルートとは、第1ステップの「アイデンティティ」のほかにどんなステップがあるか見ていきましょう。
このルート(実際には「ブランド・レゾナンス・ピラミッド」と呼びます)を説いたケビン・レーン・ケラー氏によると、このステップを一つ一つ達成していくことで、消費者との強固な関係を築くロイヤルティの高いブランドに成長させることが可能といわれています。

※ケビン・レーン・ケラー氏:
戦略的ブランド・マネジメントの研究における国際的リーダーの1人
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4884971221/ref=dbs_a_def_rwt_bibl_vppi_i2

 

第2ステップ「ミーニング」

消費者があなたのブランドを選択する理由付けとして、「何を提供してくれているのか?」を求めている段階です。

あなたの会社のブランドは何を提供しているでしょうか。
それは商品やサービスではなく、信頼や安心といったものです。例えば、SONYであれば、近年は「感動経営」を謳っています。

消費者は、企業の商品やサービスを買う理由(意味)に、その商品やサービスを利用した先にある、信頼や楽しさ、驚きといったものを理解したときにアクションを起こすのです。

 

第3ステップ「レスポンス」

では、消費者が第2ステップで商品、またはサービスを購入し、使ってみると、「まあまあ」、「そうでもない」、「想像以上に良かった」など、そのブランドに対して色々反応を示すようになってきます。この反応(レスポンス)を引き出していくことが重要になってくるのです。
つまり、あなたの会社の商品やサービスが、長期的に利用する価値があるかどうかを判断するステップとなります。

一方で、お客様の反応に企業側もレスポンスを繰り返していくことで、ブランドとお客様との関係が強固になっていくのです。ポジティブな感触が続くことで、お客様にとってそのブランドを自分事として捉えるようになっていきます。

※お気付きの通り、第2ステップで購入してくれた消費者すべてが次のステップへ導けるとは限りません。このルートはそういう意味でピラミッドのような構造をしています。

 

第4ステップ「リレーションシップ」

顧客の商品・サービスへのポジティブレスポンスが続くと、その商品やサービスは顧客にとって日々の生活に欠かせないものとなってきます。「私はもっとこのブランドを応援したい」というお客様の”成長”がみられてくるのです。
つまり、ブランド価値が最大化され、あなたの会社のブランドに対するロイヤリティが非常に高い消費者ができあがった段階といえます。

以上の4つのステップは、それぞれ前の段階が首尾よく達成できていなければ、次のステップの施策を行ったとしても失敗に終わります。
何よりもまず、ファーストステップをしっかり固めることが、ブランド価値最大化の近道であり、現代における最善の方法であるといえるでしょう。

 

企業事例:SONYのアイデンティティ

好事例としてソニーグループ株式会社のアイデンティティをみていきましょう。
ソニーの公式サイトを見ると、非常にしっかりとしたアイデンティティが形成されているのがわかります。

https://www.sony.com/ja/SonyInfo/CorporateInfo/purpose_and_values/

 
 
 
 

この動画には、「なぜ私たちはこの商品/サービスを売るのか」を伝えており、しっかりと自社の領域(「エンタテインメント」「エレクトロニクス」「モビリティ」「メディカル」「金融」)を示した上で、次のような表明をしています。

 

Sony's Purpose

クリエイティビティとテクノロジーの力で、

世界を感動で満たす。

 

ソニーグループの吉田憲一郎会長 兼 社長 CEOも、2021年度の経営方針に「Purpose(パーパス:存在意義)を軸とした『感動』の追求をしていく」としています。この「パーパス」もアイデンティティの一つといえるでしょう。吉田氏はCEO就任以来、過去3年でこのアイデンティティを定着させてきたそうです。同社が電機メーカーの中でも特筆したブランド価値を持っている理由がよく分かる発言です。

 

ファーストステップをとことん追求することが成功の道

ブランド価値を高め、長期的にその価値を維持していくには、まずこの「アイデンティティ」の確立から始める必要があります。

例えば、貴社では”ブランドブック”を作って、社員に配布して終わりになってしまってはいないでしょうか。広報の仕事はそこからが大事です。

「なぜ私たちはこの商品(またはサービス)を売るのか。」という質問の答えが、社員全員が同じであり、皆が一貫したコミュニケーションで、消費者をはじめ様々なステークホルダーに発信していく必要があります。

今は「誰か」が分からない人からものは買われない時代です。「アイデンティティ」はそのためのファーストステップなのです。

 

AStoryではアイデンティティ構築やアイデンティティを伝えるためのストーリー作りのご支援をしています。ご興味のある方はお気軽にコチラへお問い合わせください。