新人広報が今持つべきPRツール
新人の広報担当者が入社・配属される季節がやってきました。
これまで「入社早々リモートワークでもでも新人PRパーソンがすべき3つのこと」や「新人PRが今から準備しておくべき5つのこと」といった新人広報向けに役立つ情報をご紹介してきましたが、今回は新人のPRパーソンに役立つ「ツール」についてご紹介します。
ツールは持っておくことでビギナーでも強力なサポーターになりますが、活用する上での注意点もあわせてご紹介します。
広報のイロハ「広報・マスコミハンドブック(PR手帳)」
日本パブリックリレーションズ協会発行の広報・マスコミハンドブック(通称・PR手帳)は広報ビギナーの方には是非携帯していただきたい一冊です。
年々コンテンツがアップデートされているので最新版をお勧めします。最近では以下のコンテンツが追加されていました。
「今を読み解くキーワード」
(「メタバース」、「ウェルビーイング」、「ブランドアクティビズム」などがリストアップされていました。)「PRの新たな潮流」
(「インクルーシブネスの対象が拡大」、「過度なソーシャルメディアへの傾倒への警鐘」などといった記事が掲載されています。)「ファクトデータ」
(新聞の販売部数、月刊誌の発行部数、ラジオの年代別の聴取分数、TVのタイムシフト視聴動向など。)
PR手帳は一冊持っておけばPRパーソンとして重宝するはずです。例えば、どこの記者クラブにプレスリリースを投げ込めばよいのかなど基本的な情報が網羅されているので、新人広報に最適な入門書となるでしょう。
広報・マスコミハンドブック(PR手帳)2023
https://prsj.or.jp/publications/handbook/2022-2/
広報脳を育てる「クリッピングツール」
最近はPRパーソンでもやっていない人が多いですが、「クリッピング」は非常に大事です。
クリッピングでは自社の記事だけではなく、特に自社の業界の記事や競合の記事は絶対にチェックしておきたいところです。
なぜなら、自社の競合が載っている媒体は自分たちのポテンシャルに等しいからです。もしその記事に記者の名前があれば、その人にアクセスしてみましょう。署名入りの記事はその記者が業界に興味があることを意味しており、競合の記事を書いているならあなたの会社にも興味をもつ可能性はとても大きいです。
競合の記事も含めたクリッピングはメディアアプローチの確度が上がりやすくなるのです。
クリッピングサービスはELネットや日経テレコン、メルトウォーターなどがあります。メルトウォーターはウェブメディア中心のクリッピングサービスを提供していますが、ほかにもソーシャルリスニングや投稿エンゲージメント分析などデジタルメディア向けメニューが豊富なので、BtoCの企業でユーザーに書き込みされやすい企業にとってはリスク管理の一環として有用です。
ELネット https://www.elnet.co.jp/
日経テレコン https://telecom.nikkei.co.jp/
メルトウォーター https://www.meltwater.com/jp
コストを捻出できない場合
昨今は著作権管理が厳しくなっているため、日経テレコンなどはアカウントの共有使用ができません。
そのため広報部の一人ひとりにアカウントを発行するためのコスト捻出が難しいベンチャーやスタートアップ、マイクロ企業などは「Googleアラート」がお勧めです。Googleアラートは調べたいことを登録しておけば毎朝(指定した時間)に届けてくれます。
Googleアラート https://www.google.com/alerts
Googleアラート作成方法 https://support.google.com/websearch/answer/4815696?hl=ja
クリッピングは広報の必須ルーティワーク
会社の人、特に経営者は自社が社外でいつ・どこで・どのように報道されたか/評価されたかを知っておきたいと思っています。経営者はもちろん、色々なステークホルダーに接触するような社内関係者は特にいち早く情報を得たいと思っているはずです。
とはいえ会社の人全員が広報ではないので、日々収集したクリッピング情報をまとめて送ってあげると非常に重宝がられるでしょう。PRパーソンなら毎朝行うべき広報ルーチン業務の一つですので、ご紹介したサービスを活用して広報脳の感度を上げてください。
広報とメディアの架け橋「プレスリリース配信ツール」
プレスリリース配信サービスには共同通信やアットプレス、PRTIMESなど様々あります。非常に便利なのですが、その使い方には注意が必要です。
広報ビギナーは「とりあえず配信サービスで配信しておけば記者がみてくれて、メディアが採用してくれるかもしれない」と思っている方が多いようですが、現場の記者の方にタイムリーに届く(見てくれる)という保証はありません。
プレスリリース配信サービスの仕組み
ここでプレスリリース配信サービスがどのような仕組みになっているのか説明しますと、何百社ものメディアと契約している配信会社に企業がプレスリリースの配信を依頼すると、配信会社は基本的にそのプレスリリースを配信したい対象メディアにプールするようになっています。
そのためメディアの記者が自発的にタイムリーにプレスリリースを見てくれるかというと、見ないかタイムラグが生じる可能性が高いのです。
配信サービスを使う意味
ではなぜ新人広報の皆さんにこのツールをお勧めするのかというと、この配信サービスの”仕組み”と”特徴”を生かして活用することができるからです。
例えば「OpenAI」について記事を書こうとしている記者がいるとします。そのとき記者は、このようなプレスリリース配信サービスに溜まったリリース一覧から「OpenAI」についてのリリースを検索する可能性があります。
ただし、検索結果で見つけてもらうためには、プレスリリースを作成する上で、「常にメディア(記者)が何に興味を持っているか」、「記事を書く目的は何か」という視点に立つことが重要です(参照:「記者発表会でメディアを誘致するために重要なこと」「フェイクニュースを生まない広報術」)。
それを踏まえたプレスリリースを配信することで記者が探すキーワードに引っかかりやすくなり、取材の対象になる可能性がでてくるのです。
また、配信ツールを使ったメディアアプローチは上述のとおり能動的とは言えない(原則、記者が探すキーワードに引っかかるのを待つ)ため、興味をもっていただけそうな記者に個別にアプローチする能動的な活動も平行して行いましょう。
とはいえ新人のPRパーソンは記者とのコネクションがない場合がほとんどですね。その場合にも上述したクリッピングツールがおおいに役立ちます。
自分たちがアプローチしたいメディアのどんな人(記者)が興味を持ちそうかクリッピングでしっかりリサーチし、自社のメディアリストを作成して、それを元にコミュニケーション活動をしていきましょう。
「ChatGPT」はPRパーソンの武器になりえるか
昨今話題の会話型AIサービス「ChatGPT」も今後多方面で活躍するビジネスツールになりえるでしょう。
しかしながら新人広報が使うには、精度を自分で判断できないうちはリスクが大きいツールです。小生が毎回欠かさず読んでいる村山恵一コメンテーターの署名記事『ChatGPT、脅威も生成 マイクロソフト「AI盟主」の賭け』(会員限定記事)によると、生成AIにはまだまだセキュリティ上課題があるという評価でした。
こういった情報も理解しながら使う目的を明確にしてリスク回避しなければなりません。
とはいえ、このような最新かつ話題のツールに触れておくことはPRパーソンとして大切です。
現状ですぐに、確実に自社事業に効果をきたすとはいえないツールは「使いこなす」ではなく「使い慣れる」ことが肝要です。そのエッセンスを知るということは非常に大事で、PRパーソンであればメディアがどう評価しているかに注目していきましょう。
「ChatGPT」に聞いてみた「PRパーソンにお勧めのツール」とは?
試しに、ChatGPTに「新人の広報担当者にお勧めのアプリはありますか?」と訪ねたところ、下記の回答がありました。
ツールを使う上で重要なこと
最近は「新聞なんて誰も読んでいないから」などと、特に新聞を読まない若い世代を対象とした企業やブランドのPRパーソンもクリッピングはおろか毎朝の媒体チェックをしない方が多いかもしれません。
しかし権威のあるメディアはほかのメディアが必ずチェックしています。
例えばテレビ業界の人が新聞主要紙を読んでいたり、雑誌メディアもしかりと、いわゆる”プロ”の人たちがチェックする新聞は、その新聞で取り扱われている企業であれば、テレビや雑誌、その他メディアも安心して取り扱うことができるという指標にもなっているといえます。
昨今販売部数が減っている新聞ですが、そのような意味でも新聞に目を通す習慣は大事なのです。
新聞で何をチェックすべきか?
新聞を読む際、「一体今このメディアは何に関して関心が高いのか(一面の取り扱いなど)」、「どんなキーワードが使われているか(ヘッドラインや各見出しなど)」をこまめにチェックしましょう。
そうすることで広報が発信する様々なコミュニケーションのなかで、どのようなワードを使えば関心のある人に届くかというアンテナが鍛えられます。
メディアは世間に読んで(観て)いただくための工夫をするプロフェッショナルです。そこで使われているキーワードはPRパーソンも注意深くウォッチしていかなければならないでしょう。
まとめ
今回ご紹介したツールやサービスは、新人の広報担当者にとって役立つと思います。
広報・マスコミハンドブックPR手帳」「クリッピングツール」「プレスリリース配信サービス」を活用して、広報キャリアの第一歩を進んでくれたら幸いです。
そしてトレンドをみていくのはPRパーソンにとって間違いなく大事なことです。
今回ご紹介したものはそのためのツールともいえます。昨年1月の記事(「1月にやっておくといいこと」)でご紹介したように、各社メディアやアナリストが分析しているトレンドと自社がどういう関係にあるのかという発想は常に持っておくべきでしょう。
AStoryではアマゾンジャパンの黎明期からトヨタやGoogleを抜いてトップブランドとなった実績(「総合ランキングは、「Amazon.co.jp」が初の総合首位を獲得」)をもとに、ベンチャー、スタートアップ企業の新規上場におけるPR戦略立案やPR担当者育成のサポート、パーパスブランディングの構築支援をしています。
ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。