自治体成功事例から学ぶ!SDGs時代のパーパス経営

 

こんにちは。パーパス・ブランディング・コンサルタントの小西です。

地方創生事業に関わることが多くなってきており、その関係で自治体のSDGs活動について知る機会も増えてきました。今回はその自治体におけるSDGsの活動のなかから、PRに携わる方々にも参考になる事例をご紹介していきたいと思います。

 
 

1. 「SDGs」の国民認知度は約9割

現在内閣府は「SDGs未来都市・自治体SDGsモデル事業等」を推進しています。

・ 「SDGs未来都市」とは

SDGsの理念に沿った基本的且つ総合的な取り組みを推進している内閣府が認定している自治体となっています。経済・社会・環境の三側面で新しい価値の創出や持続可能に取り組んでいる自治体を選定しているようです。

・ 「自治体SDGsモデル事業」とは

SDGs未来都市の中でも特に先導的な取り組みを行う事業が該当します。
このように、地方創生とSDGsは持続可能な社会創りという点で目標が共通しているため、切り離せない関係にあるようです。

また、朝日新聞社の「SDGs認知度調査」(*1)によると、「SDGs」を聞いたことがある人は2024年時点で88.7%となっています。日本人が「SDGs」というものをしっかりと認識するようになってきたんだなというお驚きと共に、持続可能な社会創りの重要性にあらためて気付かされます。

*1:「【第10回SDGs認知度調査】若い世代でSDGsに高い関心 商品購入に影響も」https://www.asahi.com/sdgs/article/15212866

 

2. 拠点を置く地域のSDGsに注目しよう

内閣府の地方創生推進事務局に応募のあった自治体の提案資料(*2)を拝見すると、PRもSDGsの取り組みにおいて重要な要素であることが分かります。
そして政令都市を含む大都市だけではなく、町レベルの自治体も積極的にSDGsに取り組まれており、その取り組みがまちのPRにも繋がっているように見受けられました。

内閣府の「SDGs未来都市・自治体SDGsモデル事業等」においてポイントになっているのが、「経済」、「社会」、「環境」の三側面における新しい価値創出、そして課題解決を通して持続可能なまちづくりの実現が指摘されていることです。その三側面が備わった取り組みを実施し、実現している自治体が「SDGs未来都市」だと政府は定義しています。特に経済に関わってくると位置づけていますので、民間企業もその拠点を置いている自治体や地域と一体となって取り組まれるのが好ましいのではないかと思います。

ちなみに東京都では、品川区の取り組みが選ばれていて、その取り組み内容には都会らしさを感じました。
このような自治体だけではなく、民間企業においてもSDGsに取り組んでいらっしゃるかと思いますが、拠点を置いている地域がどのような取り組みをしているかにも注目し、自治体と一緒に取り組んでいかれると派生効果が高くなると思います。

なお、2050年までにカーボンニュートラルを実現するため、政府は自治体だけでなく、その地域の住民や企業とのパートナーシップが望ましいとしており、企業が拠点を置く地域の取り組みに参画するということは、その企業にとってもステークホルダーとの信頼構築につながるPRの良い機会になり得るでしょう。

2:「自治体からの提案資料等」(「2024年度SDGs未来都市及び自治体SDGsモデル事業の選定について」内)https://www.chisou.go.jp/tiiki/kankyo/teian/sdgs_2024sentei.html

 

3. PR視点のSDGsベストプラクティス

それでは2024年度のSDGs未来都市等に応募された各自治体のなかから、政令都市を除く特にPRの視点で素晴らしいなと思った取り組みについてご紹介します。SDGsに取り組まれている皆様も、是非こちらから各自治体の取り組みをまとめた資料がリストになっているので、ご覧になってみて下さい。

・ まちの強みを最大化「和歌山県みなべ町」

SDGsの取り組み実態がしっかりあるということが大前提として必要なのですが、こちらはそれに加えてPRの切り口を一生懸命作っている印象があります。みなべ町の主産業である「梅」を全面に押し出していて、まちの強みが分かりやすい提案資料になっている点も好印象です。

なかでも、みなべ町の梅農家と一般社団法人が連携し、町外、特に都市部で働く人々の関係人口を増やす取り組みとして、梅の収穫ボランティアを募る「梅ワーケーション」というものがありました。この「梅ワーケーション」を「梅ワー」というキャッチーな略称で親しみやすいようにネーミングしている点にも、社会にインパクトを作る工夫が見られます。
このようにステークホルダーの印象に残りやすい名称や取り組みを考えて実践していくことが、ブランディングに繋がっていくのだと思います。

また、梅と相性のよい「お米(新潟県)」とタイアップした、コラボレーション型の取り組みがあることも注目です。企業においても同業他社や異業種とのコラボレーションが増えていますが、このような取り組みはPR効果も高くなります。

なお、この自治体の取り組みは、日経新聞でも取り上げられていました。

・ 弱みを強みに転化「福岡県吉富町」

福岡県の吉富町は、なんと人口6,700人、九州で最も小さい自治体(全国でも12番目に小さい市区町村)です。資料には「九州で最も小さいまち」と、印象的でキャッチーなタイトルが付けられています。こんな小さなまちで、どのような取り組みができるのだろうか…と興味深く資料を拝見したところ、とても積極的且つポジティブに取り組んでいる印象です。

このまちでは、ハーバード大学の政治学者、エリカ・チェノウェス(Erica Chenoweth)氏が見出した、人口の3.5%の人々を動かせれば社会を変えられる「3.5%の法則」を引用している点でユニークです。

また、まちの規模が小さいことだけでなく、森林率が0%であることや、まちの職員だけでなく、事業者や学校も少ないといった、一見ネガティブな印象になりがちな事実でも、「コンパクトさ」をウリにし、弱みを強みに転換している点が秀逸です。

自分たちの強み弱みをきちっと分析して、且つ活用して組み立てているのだとすれば、非常に優秀なブレーンやリーダーがいらっしゃるのではないかと推察いたします。自らを、全国の零細自治体が希望を持てるようなモデル自治体という意識をもって取り組んでいる点でも素晴らしいなと思いました。

・ 親近感のあるプロジェクト名「長野県安曇野市」

長野県にある安曇野市では、市民や事業者が自治体と連携して里山の再生活動である「安曇野市里山再生計画」、通称「さとぷろ。」という取り組みを行っています。

「さとぷろ。」の「さと」には、里山やふるさとの「さと」が、「ぷろ」にはプロジェクトやプログラムの「プロ」をかけているそうです。
こちらもプロジェクト名をキャッチーなネーミングにしてブランディングしている点が特徴的です。

里山の再生に向けたプロジェクトの内容自体は、ほかの地域でも行われていることと大きくは違わないのですが、プロジェクト名に親近感が湧くように、ひらがなで柔らかい印象の見せ方が、より多くの人を巻き込めそうで、PR、つまりパブリックリレーションという視点において優れています。企業におけるSDGsブランディングの参考にもなるのではないでしょうか。

 

4. SDGsに取り組んでいる企業が参考にすべきこと

企業がその存在意義を探るなかで、これらの取り組みが参考になる点は、それぞれの取り組みにあるユニーク性です。

そのエリアならではの課題、且つ強い資源があって、一方で足りないものもある。今回ご紹介した各自治体はSDGsの課題解決にどのように貢献できているのかということを、わかりやすく、且つ共感をもたれやすいような施策として考え抜いていらっしゃいます。さらに、ストーリー性や切り口作りといったブランディングにも注力されている印象です。

企業のSDGs活動では、たまに事業活動とは整合性のない、いわゆる「取ってつけたような」活動も見受けられます。プライム市場に上場している企業などは、カーボンニュートラルに向けて数値化してKPIを立て、実行するよう国から圧力がかかる関係上、事業活動とサステナビリティが別物になってしまっているケースも出てきてしまうのでしょう。

SDGsと地方創生が切り離せない関係にあるように、社会における存在意義(パーパス)なくしては社会の一員として持続可能な事業活動が難しい時代となった今、パーパスに沿った事業活動と共に、SDGsの取り組みも行っていくべきです。その企業がやる意義や組織の強みを生かしたサステナブルな仕組みなど、企業の存在意義から逆算した戦略や施策をコミュニケーションしていくことが重要だと思います。

 

5. 企業がSDGsに取り組む上で今後大事になっていくこと

企業がSDGsの取り組みを行う上で、その活動をステークホルダーに浸透させていくことは今後ますます大事になってくるでしょう。

今回ご紹介した自治体も、政府に認定されることがゴールではなく、今後も取り組みが続く延長線上に、数多くのステークホルダーに関与してもらうプロセスを描いていく必要があります。その過程にPR要素を含めることは、その輪がさらに広がり、賛同者が増えていくことに繋がります。

企業も、カーボンニュートラルの目標達成年としている2050年に向けて、自社ならではのSDGsの取り組みをステークホルダーに共感してもらい、参加してもらえるような、何らかの関与の機会を作るとベストです。

そして、「SDGs」というキーワードの認知だけでなく、皆さんの会社のSDGs活動を広める普及促進活動の強化も必要です。これは社外だけでなく社内への普及も重要です。積極的な普及促進活動が、企業の存在意義の認知と共感、つまりはブランディングに繋がっていきます。

企業の広報PRを担う方々は、是非このような成功事例からもヒントを吸収してみてください。

企業SDGs活動の普及促進などについてサポートが必要な場合は、お気軽にAStoryにお問い合わせください。

 

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