ベンチャー企業がIPOを目指すなら力を入れるべきコト
IPOを目指すベンチャー企業のご依頼が増えています。これはIPOに伴いPRをしっかり行いたいという企業が増えているということであり、当社としてもPRの重要性について理解が深まっていることは喜ばしいかぎりです。
今回はこれからIPOを目指すベンチャーやスタートアップ企業向けに、社会の信頼を獲得するためにやっておくべきPRの土台づくりについてお伝えします。
IPOの前に立ち上げるべきは経営資産となるあの部署
IPO(Initial Public Offering)では投資家からの資金調達をするための手段というイメージが強いですが、それだけでなく、知名度や社会的信用度、人材確保のためにもIPOを目指す経営者が増えています。
そしてIPOといえばIR(Investor Relations)は必須ですが、IRはその対象が株主や投資家向けと限られています。その一方で、広報(PR)部署の立ち上げ、もしくは専任のPR(Public Relations)の担当者を置くことは、IPO後の株主だけではない様々なステークホルダー(顧客、取引先、従業員、地域コミュニティなど)からの信頼獲得につながり、その活動は経営資産にもなりえます。
アメリカの大手企業が重要視している対象が株主だけではないことは、以前の記事(「評価される企業が重視していること」)でもご紹介しましたが、ステークホルダーは株主だけではありません。そのため上場すると知名度は高まりますが、信頼を維持していくためにより一層きめ細やかなコミュニケーションが求められるようになります。
そのため、上場後、世間に認知され、共感を生む企業になるためにはPRを長期視点で取り組む必要があるのです。
例えば、優秀な人材を確保したいのに、企業のオウンドメディアに然るべき情報が載っていない、もしくは誤解されるようなメッセージを発信してしまったことで、「この会社は人を大事にしていないな」などと受けとられてしまうのは非常に残念です。
だからこそ、創業からIPOに向けて着々と積み上げてきた会社の資産価値を落とさないよう、ベンチャーやスタートアップ経営者のPRに対する意識が高まっているのでしょう。
IPOをした瞬間にPRを経営資源にするのだという思いで向き合ったほうが社会との信頼づくりにおいて追い風になります。
IPOを目指すなら早めにPR活動を始めるべきです。
IPO広報の企業事例
AStoryでサポートさせていただいた企業のうち、PR部門のいない状態から立ち上げ、IPO、そして現在に至るまで成功している、ロールモデルといえる企業(人材サービス系)の事例をご紹介します。
※PR担当者がすべき具体的な内容については過去の記事「スタートアップ広報が新規上場時に押さえるべき4つのポイント」をご覧ください。
まずこの企業がIPOにおけるPRで成功した要因の一つは、”トップがPR活動をしっかりやりたいという意思表示が明確”だったことです。
そして社長は専任のPR担当者を社内のなかから一人任命されました。担当者となった方はPRがどんなことをするのかを全くご存じない未経験者でしたが、非常に能動的にPRの基礎を吸収してくださったことも成功の大きな要因です。
【第1フェーズ】
最初のフェーズでは社長とPR担当者ともにパーパス、ビジョン、ミッション、ビジネスモデル・戦略の確認など、PR戦略策定に欠かせない経営に関わる重要な要素を今後社会に伝えていくという前提で確認しました。それは経営戦略が見えてこないとPR戦略が成り立たないからです。
また、その業界の人しか分からない専門用語や、一般的には分かりにくい業界ならではの慣習や仕組みといった、コミュニケーション上でそのまま伝えるにはボトルネックになりうることを発見するためのレビューもこのフェーズにおいて重要な作業です。これらを社長が中心となって進めました。
【第2フェーズ】
第2フェーズでは第1フェーズで確定した内容から逆算したPR戦略をPR担当者と一緒に作り込む作業です。
ここでは、未経験でPR担当となった方に、「PRとはなんぞや?」といった初歩的なことから、メディアの役割や特性、危機管理の初動対応といった広報活動で必要なノウハウをレクチャーし、戦略づくりと並行して知識を身に着けてもらいました。前述したように、この新人PRの方が前向きに取り組んでいただいたことで、その後実際の活動に落とし込むフェーズにおいても非常に円滑に進みました。
【第3フェーズ】
ベンチャーやスタートアップでPRを行う上での強みはなんといってもその会社のトップにあるでしょう。第3フェーズでは経営者の情熱を伝えていけるようなストーリー作りや経営者の人となりを知ってもらうような活動も並行して設計していきました。
繰り返しますが、会社の代表である社長が積極的に広報活動に関わり、それを優先してくれたことが、円滑なPR活動に繋がり、結果的にメディアへの露出やそれによる認知拡大に至ったのです。
PRがいくら必要性を訴えても、「忙しいから勝手にやっておいて。」と後回しされては何の成果も得られません。
トップが率先してPR活動に理解を示し、それに合意してしっかり時間を割いたことが成功に導いた好事例でした。
IPOの後も大事
IPOまではこのように企業やブランドを知ってもらう戦略や活動を組み立てていきましたが、IPO後もPRのチャレンジは続きます。
株式公開後、会社が世間の注目を集めてメディアからの取材が増えるのは嬉しい悲鳴ですよね。
しかしながら上場したベンチャー企業はごまんとあります。
その多くのベンチャー企業のなかで関心をもってもらうのはとても大変なことです。
かつベンチャー企業に常に新サービスや商品のような”ネタ”があるわけではありません。どちらかといえば、作ったサービスを広く知らしめ、拡張していくフェーズなので、PRとしては継続的に関心をもってもらうために日々コミュニケーションするためのリソースを掘り出すというチャレンジ時期に入ります。
ベンチャー企業のPRは孤独
社長から直々にPR担当者に任命されることは光栄なことですが、内実は相当の覚悟や胆力がなければ務まりません。なぜなら、外向けのPRももちろん大変ですが、社内向けのPR活動も大変だからです。
ある日突然「○○さんがPR担当者です」と社内でアナウンスがあっても、元々会社になかった職務であり、社内の各部署において理解や協力が得られるようになるまで、それなりの労力が必要になります。
先にご紹介した人材サービス会社でも、当初は社内で「PR」という職務を熟知している人はおらず、「宣伝」と「PR」の違いさえ知らないといった従業員がほとんどでした。
ベンチャー企業におけるPR活動は孤独に陥りがちです。
PR担当が一人であることが多いことや、その人がほかの職務と兼務しているケースが多いため、PRだけに集中することができず思うような活動ができないというジレンマにも陥るでしょう。だからこそ外部のPRコンサルティングを上手に活用すべきです。
相談できる壁打ち相手がいることで、いろんなフィードバックが受けられ、また自分自身では気付いていない何かを引き出してもらえるきっかけを作るなど、PRコンサルタントはいわゆるコーチでもありメンターでもあります。
PR担当者に自信をもってもらい働きやすい環境を整えること、もしPR担当者が社内で活動する際に障壁がある場合、社長に直接提言させていただくこともPRコンサルティングのサポートの一つなのです。
事例で紹介した会社はこのコンサルテーションを非常に上手く活用されたました。新人だったPR担当社は現在数年年経ちますが、メディアの記者にも評判が良く、今は副業で他社のPRを手伝うようになるほど成長しています。伴走者としてサポートさせていただいた私にとっても嬉しいかぎりです。
AStoryではアマゾンジャパンの黎明期においてパーパスブランディングを展開し、トヨタやGoogleを抜いてトップブランドとなった実績(「総合ランキングは、「Amazon.co.jp」が初の総合首位を獲得」)をもとに、ベンチャーやスタートアップ企業でもしっかりとパーパス経営ができるよう支援しています。
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