経営者は必読!人がやる気になる&育つための自社に問うべき質問10

 

昨今、人的資本経営がますます重要になっていますが、組織を成長させるためには、従業員が意欲的に働ける環境を作ることが重要です。 今回は筆者が、人がやる気になって成長するために、企業が問われるべき10の視点から、その好事例を紹介します。

 
 

1. MVV+パーパスを浸透させる仕組みはあるか?

【事例:メルカリ】

企業の存在意義を明確にするMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とパーパスは、組織の羅針盤です。

メルカリでは、全社ミーティングをする際、グループミッションと行動指針(バリュー)を示したスライドを毎回必ず提示してから始めるそうです。会社として大切にしているメッセージを常に発信することを心がけていて、それを組織全体で価値観を共有できる環境を作っています。

これはMVVやパーパスがある会社ならできることではありますが、意外に実施している会社は少ない様なので是非やっていただきたい施策の一つです。

「メルカリカルチャードック」

また、メルカリではカルチャー醸成にも注力されていて、「メルカリカルチャードック」(*1)という、メルカリのファウンデーション(共通認識)が記述されていて、会社や従業員が大切にしている共通の価値観を外部の人たちにも理解してもらいやすいようにしています。

*1:https://about.mercari.com/press/news/articles/20210913_mercariculturedoc/

 

2. 経営課題を自分事にするために情報共有をどこまでしているか?

【事例:メルカリ】

「メルカリグループロードマップ」

メルカリ社は、会社が目指す未来への道筋を書いたロードマップを全社で共有しています。メルカリグループロードマップ(*2)は、成長戦略や重視する目標、KGIといった、ゴールに必要なアクションが盛り込まれています。創業から20周年となる2033年にどうありたいのか、中期経営計画の場合であれば、3年後どうありたいかを言語化して明記しているのは素晴らしい試みです。

ちなみに、組織のエンパワーメントに関する書籍『社員の力で最高のチームをつくる――〈新版〉1分間エンパワーメント』の中で、星野リゾート代表の星野佳路氏が、経営課題だとか業績などの情報をどこまで共有するのかは、エンパワーメント組織(従業員の自主性が促進され、能力が開花するような組織)を作っていく上で一つの要素になるとコメントしています。

この情報共有はとても重要で、前述したメルカリの事例にもあるように、会社が目指しているロードマップを見せることで、従業員はその計画と現状とのギャップが把握できます。そしてそのギャップを埋めていくためにどうすべきか?といったベクトルに向かって進んでいける仕組みだと思います。

*2:https://engineering.mercari.com/blog/entry/20241225-engineering-roadmap/

 

3. 会社のゴール設定と社員のゴール設定に整合性は取れているか?

これは会社が目指す姿や使命が、個人のゴール設定と整合性がとれているか?という問いです。

【事例:味の素】

味の素社には、パーパスとは別に、「ASVマネジメントサイクル(Ajinomoto Group Creating Shared Value)」(*3)という社会課題の解決と経済価値を創出するためのプロセスがあります。

これは味の素の「アミノサイエンス®で、人・社会・地球のWell-beingに貢献する」というパーパスの下に置かれている取り組みです。組織や個人の目標設定をいかにASVにつなげるか、その目標を社内で共有して達成していくプロセスのようです。

*3:https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/aboutus/asv/

 

【事例:Google】

Googleはチームで結果を出すことを重要視しており、チームマネージャーはチーム内のゴールを決め、チームで結果を出すようなゴール設定をしています。代表的なものに、会社の利益のために大きなゴールから逆算して考える「OKR(Objectives and Key Results)」(*4)があります。経営陣が四半期の初めにOKRを設定し、各部署はチーム内のOKRを設定します。大きな目標から逆算して細分化していくイメージですね。

ゴール設定で重要なのは、「自分が何に貢献しているのか」を、きちんと手応えを感じられるような目標設定にすることです。そうすることで、人がやる気になる施策になりえます。

*4:https://rework.withgoogle.com/jp/guides/set-goals-with-okrs#introduction

 

4. 社員の自主性や挑戦を促す人事制度はあるか?

【事例:SONY】

ソニー社のユニークな仕組みに社内公募制度があります。ソニーには「自分のキャリアは自分で築く」という理念があり、社員自ら希望の職務に応募して事業の枠を超えた多様なキャリアに挑戦できるという制度になっているようです。

「キャリアプラス制度」

さらにソニーでは「キャリアプラス制度」(*5)という社員の自主性、挑戦心と事業の多様性を最大限生かす成長支援の人事施策もあります。部署異動をせずとも、週の一日から二日間を別の職場の職務に当てることができる、いわゆる「お試し体験」ができる制度です。

*5:https://www.sony.com/ja/SonyInfo/Jobs/recruit/system/career.html

 

【事例:サイバーエージェント】

「キャリチャレ」(*6)

社内異動公募制度で、現部署で1年以上経てば、他部門またはグループ会社への異動がチャレンジできるというものです。

*6:「社員の挑戦を応援する社内異動制度「キャリチャレ」とは」https://www.cyberagent.co.jp/way/list/detail/id=27170

 

5. 自社独自の人が育つ学習を促す仕組みはあるか?

【事例:星野リゾート】

「麓村塾(ろくそんじゅく)」(*7)

学びたい人が学びたいときに、学びたいものを学べる機会として、星野代表や社内のエキスパートが講師となる社内ビジネススクールの制度です。

部品製造・流通大手のミスミでも「ミスミ戦略スクール」という経営トップ自らが塾長を務め、経営リーダーに必要な視座と戦略思考能力を鍛える研修を行っています。

いずれも経営トップが直々に指南する機会を創出していますが、トップが人材を育成することにコミットしている姿勢が感じられます。

*7:https://hoshinoresorts.com/jp/recruit/career_path_system/

 

【事例:日清食品】

「1on1ミーティング」

日清食品では、従業員一人一人に働きがいや成長を実感してもらうことを目的に、上司と部下が1対1で面談する「1on1ミーティング」を実施しています。権限移譲を通じて部下のエンゲージメントと主体性を向上させる目的があります。

このようなコミュニケーション機会が増えれば増えるほど、モチベーションが上がっていくというデータ(*8)もあり、今後1on1ミーティングを実施する企業は増えていきそうです。

*8:「「従業員のエンゲージメントを高めるマネジメントに関する共同研究」 日清食品と慶應義塾大学大学院が「1on1ミーティング」の有効性を実証」https://www.nissin.com/jp/company/news/10213/

 

ちなみに、アマゾンやGoogleでも、この1on1を大事にしていて、上司と部下との信頼関係を築き、部下のモチベーションやエンゲージメントを高めるために有効な手段とされています。

 

6. 失敗を共有して活かす仕組みはあるか?

【事例:星野リゾート】

「S-pro(エスプロ)」(*9)

星野リゾートのサービス力を支える独自のトレーニング手法です。S-proとは「サービス・プロフェッショナル」と「サービスチーム・プログラム」の2つの意味を掛け合わせた社内造語。

星野リゾートの各施設にS-proリーダーがいて、月に一度、オンラインミーティングでサービスの成功例や失敗例を共有し、サービス品質の向上に取り組む施策になっています。

このS-proの肝は、失敗を共有する仕組みにあります。アマゾンにも失敗を早く報告させ、失敗を報告した人を高く評価する仕組みがあります。これはリスクを大きくさせることなく解決することや同じ失敗が他部門で起こらなくすることが狙いです。会社としても早く火消しすることができ、そのソリューションを共有して失敗しない体制作りができるという利点もあります。

*9:https://hoshinoresorts.com/jp/recruit/career_path_system/

 

【事例:Google】

Googleでは新製品や新機能の発表後、担当チーム内で反省会を実施しています。Googleでは、一見、成功したように見えるプロジェクトでも、必ず改善点があると考えていて、その反省会の内容を社内で公表するという仕組みがあります。それによってほかの人が参考にすることができるわけです。

Googleには失敗に寛容で、透明性の高いコミュニケーションをしていることが伺えます。

 

7. イノベーションが起こる仕組みはあるか?

【事例:サイバーエージェント】

「あした会議」

特に意識的にイノベーションが起こるような仕組みだなと思うのが、サイバーエージェントの「あした会議」(*10)です。これは、未来に繋がる新規事業や課題解決の方法などを提案、決議する会議のことで、年に1~2度合宿形式で開催されています。実際にこの会議によって創出された事業による売上貢献度は高いようで、未来の新しい事業を創るというイノベーションへの気概が感じられる施策です。

*10:https://www.cyberagent.co.jp/way/list/detail/id=27411

 

【事例:Google】

「20%ルール」

これは業務時間の内の 20% を「普段の業務とは異なる」業務( Google においては新規事業立案 ) に充ててよいという制度(*11)です。元はGoogleのエンジニアのアイデア創出がコンセプトになっています。Google Earthの絶景ギャラリー「Earth View」はこの制度がきっかけで誕生しています。

*11:https://grow.google/intl/ALL_jp/work-at-google/

 

8. 心理的安全性が確保されているか?

【事例:Google】

「ドリー」

元はGoogleの創業者であるラリー・ペイジ氏やセルゲイ・ブリン氏に質問できる社内制度で「ドリー」と呼ばれているものです。これはトップに質問できるシステムです。公平性を保つために、良い質問か悪い質問か社員が投票することができます。良い質問という評価が増えると質問の優先順位があがり、TGIF(「Thank God It's Friday」の略で米企業の社内交流会議などに使われる)でラリーとセルゲイが答えてくれる仕組みになっています。その回答に対しても社員が評価することができます。

従業員が何らかの圧力や脅威を感じずに、安心して質問ができる仕組みでもあり、すごくフェアな仕組みではないでしょうか。

ちなみにGoogleの元CEOエリック・シュミット氏は、少なくとも1年に1回は「自分なら自分の下で働きたいか」と考える時間を作っていたそうです。そんな上司の下で働きたいですよね。経営陣がこのような考え方なので、従業員の心理的安全性は確保されているであろうことが想像できます。

 

9. 社内の中で建設的な競争を促す仕組みはあるか?

【事例:Google】

「スニペッツ」

毎週「誰が何を達成したのかを」をチーム毎に1つのファイルにまとめ、上層部で厳選されたスニペッツが全社にシェアされる仕組みです。スニペッツは世界中の全社員に共有されます。それは従業員たちにとって学びや刺激になり、「じゃあ私たちも頑張らなきゃね」という建設的な競争を促していく狙いがあるようです。

アマゾンにも名称はついていませんが、同様の仕組みがあります。アマゾンでは、自分のチームの成功事例を関わった人全員の名前を明記して、全社員に向けてメールでシェアする文化があります。上司が自分の成果として独り占めしてしまうのではなく、自分の部署の誰かの成果を称えるカルチャーがあります。

 

10. 内発的動機を促す仕組みはあるか?

【事例:スターバックス】

スターバックスにはモチベーションが高い従業員(パートナー)が育つ仕組みがあります。外発的動機(例:お金が沢山もらえるから働く)というよりは、内発的動機(スターバックスの一員であることが誇らしい、この店に貢献したいなど)の人たちが多いようです。スターバックスの求める人材像は、サービス業のプロとして徹底して顧客に尽くせる人。つまりお客様を大切にするという=人へのリスペクトがその仕組みから感じられます。

「グリーンエプロンプログラム」

スターバックスのエンゲージメントを高める取り組みの一つです。ミッションやバリューに沿った行動を従業員が見つけたら、その行動をした相手に、感謝の気持ちを書いたカード渡すというもので、仲間同士だけでなく、上司から部下、また部下から上司に渡すこともあります。このような取り組みが、スターバックスというブランドを作りあげているのではないでしょうか。

 

まとめ

人がやる気になる、育つための企業内施策は多岐にわたります。これらの施策を組み合わせることで、組織全体の活性化と成長が期待できるでしょう。AStoryでは、企業のパーパス経営を実現する広報・PR活動を支援しています。ぜひお気軽にご相談ください。

 

AStoryではアマゾンジャパンの黎明期からトヨタやGoogleを抜いてトップブランドとなった実績(「総合ランキングは、「Amazon.co.jp」が初の総合首位を獲得」)をもとに、ベンチャー、スタートアップ企業の新規上場におけるPR戦略立案やPR担当者育成のサポート、パーパスブランディングの構築支援をしています。

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