MVV+パーパスを社内に浸透させる7つのステップ
こんにちは。パーパスブランディングコンサルタントの小西です。
経営者の皆様にとって、企業理念を社内に浸透させることにお悩みの方は多いのではないでしょうか。パーパス(社会における企業の存在意義)を含む企業理念の浸透には、行動指針とセットにすることがコツです。パーパスを全うするため、どのような行動を取ればよいのか理解してもうらことが大切です。セットで社内に浸透させていく仕組みを作ることで、最終的には社員のモチベーションや会社に対するロイヤルティが高まっていくことに繋がります。前回の記事「経営者は必読!人がやる気になる&育つための自社に問うべき質問10」から、「MVV+パーパスを浸透させる仕組み」をピックアップし、今回はその仕組みの作り方についてアマゾンでの事例を用いてご紹介します。
アマゾンの「リーダーシップ・プリンシプル」
アマゾンには「リーダーシップ・プリンシプル」という、アマゾンの成功と成長を支えるために設計された行動指針があります。社員全員がリーダーとして行動することを求めた16項目の原則で構成されていて、この原則によってアマゾンの様々な日常業務における意思決定が行われています。
各項目の趣旨を要約すると以下となります:
Customer Obsession(顧客へのこだわり)
Ownership(オーナーシップ)
Invent and Simplify(創造と単純化)
Are Right, A Lot(多くの場合正しい)
Learn and Be Curious(学び、そして興味を持つ)
Hire and Develop the Best(ベストな人材を確保し育てる)
Insist on the Highest Standards(常に高い目標を掲げる)
Think Big(広い視野で考える)
Bias for Action(とにかく行動する)
Frugality(質素倹約)
Earn Trust(人々から信頼を得る)
Dive Deep(より深く考える)
Have Backbone; Disagree and Commit(意見を持ち、議論を交わし、納得したら力を注ぐ)
Deliver Results(結果を出す)
Strive to be Earth’s Best Employer(地球上で最も従業員を大切にする雇用主になる努力をする)
Success and Scale Bring Broad Responsibility(成功と成長には、より広い責任が伴う)
出典:小西みさを著『アマゾンで学んだ! 伝え方はストーリーが9割』
参考:「リーダーシップ・プリンシプル (Leadership Principles)」https://www.aboutamazon.jp/about-us/leadership-principles
私がアマゾン在籍時には、この行動指針は14項目だったのですが、現在は16項目に増えています。
私のアマゾンでの経験を踏まえ、皆様の会社のパーパスや行動指針といった、理念を社内に浸透させるためのステップを7段階にしてご紹介します。
ステップ1「採用」
採用の時点では、「応募者がどこまで自社のパーパスに共感してもらっているか」や、「自社の行動指針をベースに採用を行っているか」を確認してみましょう。アマゾンの採用時、特にマネジメント層の人を採用するときは、ほぼ、「パーパス」や「リーダーシップ(行動指針)」をどれだけ発揮してくれるかという点を重視しています。そのような視点で採用すると、実際に採用された方が入社してきたとき、スムーズに企業風土に馴染みますし、会社の行動指針をベースに動いてくれるため、そのチームがさらにレベルアップしていくようになります。
アマゾンの採用では、経歴書の経験値は確認しますが、役職やマネジメントをしていた組織の規模というよりは、アマゾンのリーダーシップ(行動指針)やパーパスにフィットするかを注視しているので、入社してお互いが「あれ、ちょっと違ったかな?」ということは、余程の例外がない限りなりにくい仕組みです。
関連記事:「イノベーションを生み出す人材採用」https://www.astorypr.com/news-all/knowhow-recruiting
ステップ2「オリエンテーション」
企業規模などによってやり方は様々ですが、新入社員や中途採用者に対して、会社の方針や業務内容、ルールなどを説明する説明会や研修が行われますが、アマゾンがオリエンテーションでもパーパスやリーダーシップ・プリンシプルを刷り込んでいきます。採用時にアマゾンにカルチャーフィットする人物を採用しているので、必要ないように思われるかもしれませんが、あらためてオリエンテーションで自社の理念を理解してもらうことで、いかにパーパスや行動指針が重要であるかを再認識してもらいます。
ステップ3「ゴール設定」
アマゾンでは、「MVV+パーパス」を浸透させるために、いわゆる管理目標だけではなく、「行動目標」というものも立てます。その行動目標(ゴール設定)が、皆さんの会社でいうミッション、ビジョン、バリュー、パーパス、行動指針(クレドなど)といった理念から逆算していることがポイントです。そうすると、「自分は目標を達成するために、どこを磨くべきなのか」「どのようにアクションすべきか」を詳細に計画していくことができるようになります。
このゴール設定をしておくことで、社員は常日頃から行動目標に則った思考で動くことができ、自然とリーダーシップを発揮するということに繋がりやすくなります。
ステップ4「ポジティブ思考回路」
4つめのステップは、「ポジティブな思考回路を作る」ことです。部下の成長を促すコミュニケーション手法として「1on1(ワンオンワン)」がありますが、上司が部下、またはチームメンバーの一人ひとりにリーダーシップを発揮してもらえるような人材になってもらうようサポートする際に有用なコミュニケーションです。例えば、中途入社してきた人がリーダーシップを発揮したいが上手くいかない、どうやって進めればいいか分からないというようなとき、上司が壁打ち相手になりながら、方法や考え方を1on1でサポートしていきます。
アマゾンでは会議のシーンでも、よくリーダーシップ・プリンシプルが登場します。「このプランは”Think Big”じゃないよね」などと自然に会話の中で飛び交います。皆が「私たちが取るべき行動ってこうだよね」と、リーダーシップ・プリンシプルを軸に物事を判断しているのです。そのような環境(仕組み)ができていると、自然とポジティブな思考回路が社員に根付きやすくなります。
関連記事:「ビッグモーター不正問題から目をそらしてはいけない企業の教訓」内〈マネージャーのミッションとは〉https://www.astorypr.com/news-all/lessons-learned-from-the-bigmotor-fraud-problem?rq=1on1#5
ステップ5「フィードバック・報酬」
フィードバックを通じて、さらにリーダーシップを高めます。行動指針を作っている会社は増えていますが、なかなか浸透しない、絵に描いた餅となってしまっている会社もまだ多いようです。行動目標に対して、それがどう報酬に影響するのかということが明確になっていない会社は、報酬システムやフィードバック方法を見直してみることをお勧めします。例えば、アマゾンでは、上司や部下、同僚など、様々な立場の人から評価を受ける「360℃評価」制度があり、そこでも「リーダーシップ・プリンシプル」が軸となります。自分がどれだけ「リーダーシップ・プリンシプル」に適った行動をとったか、その達成度などによって報酬も決まるため、自ずと日頃の行動が、会社の理念に沿うようになっていきます。
ステップ6「チームワークでリーダーシップ促進」
チームワークにおいても、会社のMVVやパーパス(アマゾンでは「リーダーシップ・プリンシプル」)を意識した言動や、共通のゴール設定を持つことで、チームワークでもリーダーシップというものを強力に促進していくことができます。
共通のゴールを認識しているチーム内では、ステップ4「ポジティブ思考回路」でご紹介したように、様々なシーンで行動指針のキーワードを引用した会話が増えるでしょう。
また、以前の記事「エンゲージメントを高めて強い組織になるための6つの施策 」ではチーム力を高めるアマゾン流の方法もご紹介していますので、是非ご一読ください。
ステップ7「リーダーシップのカルチャーを醸成」
最後は「リーダーシップのカルチャーを積極的に作っていく」ことです。全社を挙げて、「リーダーシップが大事ですよ」と社内発信していくだけでなく、例えば、全社会議などで表彰する機会を設けることをお勧めします。筆者がアマゾンに在籍していた当時は、年に2回程度、全社会議があり、そこでパーパスから逆算したリーダーシップを発揮したチームや個人を称える機会がありました。こういった体験をすると、表彰を受けた人も、それを見る人も、「MVVやパーパスに則った行動」が大事なことだと伝わりやすくなるでしょう。ただ、表彰されることが目的になってしまっては、MVVやパーパスの浸透という目的とはずれてしまうため要注意です。
まとめ
このように大きく7つのステップを踏むことで、会社の理念の浸透し、社員に実践してもらえるようになっていきます。7つのステップすべてを実践するのは難しくても、まずはステップ1の採用から始めてみるのはいかがでしょうか。
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