Amazonで培った「伝え方」の極意 ~「アマゾンで学んだ! 伝え方はストーリーが9割」上梓~
この度、宝島社から「アマゾンで学んだ! 伝え方はストーリーが9割」という本を上梓いたしました。
拙著では、まだ日本でAmazonが知られていない黎明期から約13年、私が広報責任者としてメディアに取り上げてもらうべく、奔走していた頃の話をまとめております。
今回は本著にあるアイデアの絞り出し方、何もないところからPRネタを作り出す方法を、当サイトを訪ねてきてくださった皆さまのために、少しご紹介させていただきます。
アマゾンジャパンがECの雄となる前
Amazonは今でこそGAFA(Google、Amazon、Facebook、AppleのアメリカIT企業の総称)の1つとして、日本においても多大な影響力を持つEC企業となりましたが、私が入社した当時のアマゾンジャパンは、まだ一般的に知られていないベンチャー企業でした。
業界的には「明日にでも日本を撤退するのでは?」という見方が多かったのですが、実際、当時は赤字経営だったのです。
故に、私も最初の3年間は死にもの狂いの状態でした。メディアに出せる売上や従業員数などの公表できる”数字”が何一つないなか、様々な壁にぶち当たり、一筋縄でいかないことの連続だったのです。
そんなナイナイだらけの企業を「如何にしてメディアに取り上げてもらうようになったのか」という実体験が、この本のベースになっています。
「PRするものが何もない…」とお嘆きのスタートアップやベンチャー企業の皆さま、大企業ではなくてもPRはできます。どんな企業や団体にも、PRできる要素はあるはずです。
本著にあるアイデアの絞り出し方、何もないところからPRネタを作り出す方法を、当サイトを訪ねてきてくださった皆さまのために、少しご紹介させていただきます。
メディアにとり上げてもらうためにとりかかったこと
まず、自社を表に出していく時、当然ながら、自社の特長(強み)を熟知していなければ、メディアがその企業をとり上げる”理由”を説得できません。例えば、
「この業界で唯一、私たちの会社ができることは〇〇です。」
「〇〇のような人材を束ねて活動しているのは我々の企業だけである。」
など、自社の”表現”を分かりやすく記者に伝えるというアプローチは、アマゾンジャパンでのキャリア以前から心掛けていました。
とはいえ、先述したとおり、当時のアマゾンジャパンには、「何をもってスゴイと言えるのか。」という公表できる”ファクト”が全くありませんでした。
そこで、私が何をしたのかというと、社内の「リソース」つまり資産探しです。当時、私が社内のリソースとして目をつけたのは、「物流センター」と「ランキングデータ」。Amazonの物流センターは、今でこそ情報番組などで紹介され、その巨大な倉庫やロボティクスと呼ばれる商品管理システムが有名になりましたが、当時はどんな人が働いて、どのような仕組みになっているかといった情報が、全く世の中に知られていませんでした。
私は、そこでただ「見せるだけ」のプレスツアーをするのではなく、会社の課題でもあった、世間に認知されていないAmazonの「品揃え・低価格・利便性」についてメディアに理解していただくため、注文から発送までのオペレーションや、作業を合理化・加速化させるノウハウなどをストーリー化して伝えたのです。
これが功を奏し、Amazonの規模性や利便性を驚きとともに、メディアを通して世間の皆さまに認知していただくきっかけとなりました。
また、ランキングデータを如何に活用したかについては、是非本著をお読みいただければと思いますが、結果として、ターゲットとするメディア各社に、既存の他社データからAmazonランキングに置き換えることができました。
このように、驚いてもらえる数字がない場合は、リソースをストーリー化してみることをお勧めします。
拙著では、会社の強みを理解して、何を訴えていきたいのか、またそれを表現できる何かを探す方法についてご紹介しています。
シンデレラを見つける
ここまで読まれた方のなかには、「とはいっても、そんなサービスも商品も自社にはない…」とおっしゃる方がいるかもしれません。
そのような企業でも、自分たちでリソースを作り出していくことは可能です。
当時のAmazonは、まだ世間では「ネットの本屋」という認知しかされていませんでした。しかしながらその頃、既に書籍以外にもDVDやCD、PCソフト、家電などの取り扱いが始まっていたのです。Amazonには本以外の品揃えがあるということを世の中に証明していく必要がありました。
そこで私が次にしたのは、社内で”スペシャリスト”を探すこと。つまり、社内にアンテナを張り、社内の人材をPRに巻き込んだのです。
詳細は拙著にもあるので割愛させていただきますが、社内にいた”シンデレラ”のおかげで、当時はまだネットで買うことに抵抗があったあるモノを、カスタマーに安心して購入していただけるようになりました。
シンデレラ以外にも、社内の様々なスペシャリストを発掘し、その人たちに”スポークスパーソン”となってもらうことで、消費者により分かりやすく自社の本以外の商品を伝えることができ、「ネット書店」というイメージを払拭することに成功したのです。
コミュニケーションが必要なすべての方に
私は現在、AStoryというPR会社を運営しておりますが、この本はPRパーソンだけでなく、経営に携わる方から学生さんまで、コミュニケーションを必要とするすべての方に向けた内容になっています。
従業員のエンゲージメントを強固にしたい組織のリーダーや、面接で自分のことを上手に伝えたい学生、プレゼンを成功させたいビジネスパーソンなど、様々なシチュエーションで壁にあたり、日々悩みがちなコミュニケーションにおいて、少しでも皆さんが活用できるヒントや術が見つかることを期待しております。
是非、本著をお読みいただき、ご参考にしていただければ幸いです。