グループ広報のススメ ~パーパスを基軸としたコミュニケーション~

 

こんにちは。パーパス・ブランディング・コンサルタントの小西です。

今回は「グループ広報」に注目してみたいと思います。グループ広報とは、いわゆるホールディングス(Holdings、HD)、グループ会社、持株会社の広報活動です。分社化やM&Aなどにより、各事業会社を傘下に収めグループ化した会社(ホールディングス)の広報は、その傘下の会社から「一体何をやっているのか?」と思われていることも多いようです。
グループ経営は今、とても大事になってきているので、あらためてグループ広報(ホールディングス広報含む)にフォーカスしたいと思います。

 
 

なぜ今グループ広報なのか?

日本企業がより大きな成長と発展をするため、「会計ビッグバン」と呼ばれる改革が2000年前後に行われましたが、その一環で「連結決算」が導入されたのが2000年の3月期でした。それ以降、グループ経営が一層重要になったのです。なぜなら、2000年3月期決算からは、投資家と経済アナリストたちの分析や判断基準がグループ経営のパフォーマンスも重要視されるようになったためです。

さらに、グループ連結経営が重要視されるのは業績だけではありません。企業イメージの向上や社会からの信頼構築なども、単独の会社だけではなく、グループベースで考えていかなくてはならない時代になったのです。

また、現代は先行き不透明で予測困難なVUCA(ブーカ)の時代といわれています。実際、消費者の意識が変化し、モノやサービスが簡単に売れなくなり、社内に目を向ければ、人材の流動が激しく、企業文化が育ちにくいなど企業はこれまでにないほど複雑な課題に直面しています。そのような時代に多方面からの信頼を獲得して企業の成長を維持していくには、非常に高度なコミュニケーションが求められる時代になっています。

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例えば、人材育成やコンプライアンス体制の構築・意識向上、危機対応時の連携と協力、SGDsやサステナビリティゴールの達成といったテーマを掲げている企業は多く見られますが、そのテーマの実行がグループ全体で求められているということを、コミュニケーションの中で意識していく必要があるでしょう。

つまり一言で表すと、「グループシナジー」への期待値が高まっているといえます。そのグループシナジーを出すような経営を実現するためのコミュニケーションとして、グループ広報は今後より一層重要になっていくはずです。

 

ホールディングスとは?

ここであらためて「ホールディングス」について理解を深めましょう。

【ホールディングス化の目的】

企業がホールディングス化する最大の目的は、「経営資源の最適化」とされています。
企業は限りある経営資源を有効活用して、競争力や企業価値の向上を目指すわけですが、ホールディングス化を行うと、持株会社自身はグループ全体の戦略策定や各社の管理に専念できます。
また、傘下の事業会社も事業運営に集中できます。これらがホールディングス化のメリットです。
ほかにも、意思決定の迅速化やグループシナジーの創出、経営責任の明確化、そしてコーポレートガバナンスの強化を目的とする企業が増加傾向にあるようです。

 

グループ広報の役割

それでは、ホールディングスにおける広報(以下、グループ広報)には、どのような役割があるのでしょうか。
社外向けと社内向けに分けて説明します。

【対外的なグループ広報の役割】

  1. グループ全体のブランド構築

  2. ステークホルダーへのグループ情報の一元的な発信

  3. グループ全体の危機管理の対応強化

【社内向けのグループ広報の役割】

  1. 経営情報のグループ内の共有化

  2. グループ内コミュニケーションの推進

  3. グループ社員としてのアイデンティティの醸成


 

筆者が毎年審査員として参加している「社内報アワード」に、過去エントリーしてきたグループ会社のなかで、インターナル広報(社内広報)が成功している企業には、以下のような特徴がありました。

  • 経営方針、経営情報などのグループ内共有化に対してトップが強力にコミットしている。

  • グループ内コミュニケーションを推進するような企画を実施している。

  • グループの一員として自覚できるようなトップの発信や各社でのグループシナジーを意識した施策の成功事例をグループ内でシェアしている。

上記のように、グループが一体化するような施策を打ったり、グループ社員としてのアイデンティティの醸成を積極的に実施している企業は、以前の記事(*1)でもお伝えしている通り、社内コミュニケーションが円滑であり、イコール、成功している会社です。グループ会社において、その大切な役割を担うのが、グループ広報なのです。

*1:「社内報は最強のコミュニケーションツール!

 

パーパスから逆算したグループ広報の事例 ― ソニーグループ

グループ全体のパーパスから逆算した経営とコミュニケーションをしている好事例としてSONY(以下、ソニー)の例を紹介しましょう。

ソニーの場合はソニーグループ株式会社の傘下に30社の連結子会社があります。
ウェブサイト、統合報告書、有価証券報告書などを通したコミュニケーションでは、パーパス経営をグループ一体で行っている印象を受けます。

例えばソニーグループの「Corporate Report 2024 統合報告書」に記載されている代表執行役会長CEOの吉田憲一郎氏のメッセージには、

『ソニーグループでは、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というPurpose(存在意義)のもと、約11万人のグループ社員が一丸となって、「感動」を創り、それをパートナーとともに世界に届けることに取り組んでいます。(中略)また、Purposeを基点に各事業が進化し、ポートフォリオの多様性を強みとしていくため、2021年にはソニーグループ株式会社発足など、グループアーキテクチャーを再編しました。各事業が等距離でつながる体制を整えたことで、グループシナジーも加速しています。(中略)私が一貫して重視しているのは、Purposeのもと「感動」と「人」を軸とした長期視点の価値創造を行うことです。』

とあります。

出典:SONY Corporate Report 2024 統合報告書

ソニーグループがパーパス経営をやってきて、トップも常にパーパスから始めるようなコミュニケーションに注力していることが伺えますし、きちんとそれにコミットしています。
グループ傘下の各企業においても、グループ全体のパーパスとシンクロするような事業活動をやっていて、そのための柱や、自分事化するような仕組みも作っていますので、グループ広報のみならず、グループ経営のお手本になるような事例として参考になると思います。

 

パーパスを基軸に、グループシナジー創出へ

VUCA時代において、企業はグループ全体で価値を創造し、ステークホルダーからの信頼を獲得していくことが求められています。そのために重要となるのが、グループ広報の存在です。

今回はソニーグループを例に、パーパスに基づいたグループ経営とコミュニケーションの重要性を解説しました。グループシナジーを最大化し、持続的な成長を実現するために、グループ広報は今後ますますその重要性を増していきます。
パーパスを基軸にしたグループ全体のブランド構築とコミュニケーションをしっかりと実践して、グループ広報が「何をやっているのか」を積極的に周知していきましょう。

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