2025年のPRトレンド7つのキーワード
経済誌Forbesが毎年発表する、世界の公開会社の上位2000社のうち、8割をクライアントにもつ調査会社の発表(*1)によると、PRの市場は今後ますます高まるそうです。2022年に世界のPR会社の市場規模評価額が673億米ドルとされていたものが、10年後の2032年には倍増の1,312億米ドルに達すると予測されています。これはつまり、今後ますますPRのニーズが増えていくことを意味しています。当社の記事を読んでくださっている皆さまは、恐らく既にPRおよびパーパスブランディングに取り組まれている企業の経営者や、広報のご担当の方々が多いと思いますが、2025年も引き続きPRを強化していきましょう。
さて今回は毎年恒例のPR&ブランディングにおける今年のトレンド予測をご紹介していきます。
*1:「PR Management Market Outlook (2022 to 2032)」(https://www.factmr.com/report/pr-management-market)
1. パーパス主導型コミュニケーション
引き続きパーパス主導型のコミュニケーションが重要な年となります。
【パーパスとは】
あらためて「パーパス」についてご説明すると、パーパスとは、「自分たちが社会で”存在する理由”を世間に知ってもらい、ステークホルダーや社会から共感を得て、長期に渡って認識・理解してもらうことでブランディングの強化につなげるという考え方です。つまり「社会における存在理由」の答えがパーパスであり、パーパスはビジョンやミッションを形成する根幹に位置する概念になります。
2019年、にアメリカのBusiness Roundtableという財界ロビー団体が企業のパーパス(社会における存在理由)について再定義を宣言して以降、徐々に日本の企業もパーパスは浸透してきています。「パーパス経営」や「パーパスドリブン」、そして「パーパスブランディング」が注目され始めたのもこの頃からです。
【パーパス主導型コミュニケーションとは】
パーパス主導型コミュニケーションとは、この「パーパス」を軸としたPR(パブリックリレーション)のことです。例えば「サステナビリティ」。企業が持続可能な社会を作っていくことに、どのように貢献するのか、しているのかを、その企業のパーパスを基軸に、事業そのものに持続可能性を組み込んだ取り組みを発信するといったコミュニケーションが例に挙げられます。自社の商品やサービスのスペック部分について語るだけではなく、その提供価値や、サステナビリティと両立していく企業の努力といった説明責任を果たしていくことが重要になります。
企業としてPRの戦略を策定する際には、自分たちのパーパス、ビジョン、ミッション、バリューからの視点と、常に変化する世の中のニーズを捉えながらプランニングしていくことが大事になります。
2. パーソナライズドコミュニケーション
2024年のトレンド予測(*2)でも取り上げましたが、2025年も引き続き「パーソナライズドコミュニケーション」が重要になってきます。
【パーソナライズドコミュニケーションとは】
パーソナライズドコミュニケーションとは、企業のターゲットとなる顧客一人ひとりのニーズや関心に応じた、より関連性の高い情報を届けるアプローチになります。
例えば、プレスリリースは企業が何かを発表する際の効果的な伝達手段ですが、市場が成熟し、生活における価値観が多様化して、その商品やサービスに関する情報に接するプロセスも一様ではなくなった現代では、プレスリリースだけでは、情報伝達の有効性として物足りなくなってきています。企業の広報担当者が記者やインフルエンサーにピッチ(売り込み)をかけていく際には、その記者やインフルエンサーの向こう側にいる読者やファンが興味を持ちそうなコンテンツを作り込んで提供することが鍵になります。
そのため、ゴール設定も変えていく必要があるでしょう。従来では企業のPRにおけるKPIは、どれだけメディアに露出したかといったボリュームを重要視する企業が多かったと思いますが、現在は、自社が本当に届けたいターゲットに対して手厚くコミュニケーションしていくことが重要になってきています。数を追うだけでなく、自分たちのステークホルダーはどういったペルソナなのかを見極め、ステークホルダーの中での優先順位を決めてコンテンツを作り提供していくことがより効果的なコミュニケーションになっていくでしょう。
*2:「PR&ブランディングの2024年注目トレンド」>[パーソナライズドコミュニケーション](https://www.astorypr.com/news-all/pr-branding-trends-to-watch-for-2024#4)
3. AI活用
生成AIの技術は正に日進月歩の勢いですね。PR業界ではまだアナログなシーンが多いですが、AI活用が無視できない時代となっています。広報担当者の皆さんはプレスリリースなどで活用している方は多いのではないでしょうか。また、メディアのモニタリングとして、記事掲載をカウントするサービスやPR素材を作るAIツールなど、広報業務の労力を手放せるようになってきています。こうしてどんどん、AIを活用して表現の選択肢を増やしたり、効率化を図る企業が増えています。
【AI活用における注意点】
ただ、AIの精度についてはまだまだ注意が必要です。AIが提供してくる情報の精査はまだ行う必要があります。日本ではAI使用におけるレギュレーションが明確でなく、その技術開発の速度に追いついていないようなので、政府や業界団体のルール制定の動きを注視しながら、時代に即した技術活用をしていきたいところです。
4. リスク管理
様々な情報ツールやAIといった技術革新が進む一方で、リスク管理(守りの広報)も今後はさらに重要になってくるでしょう。
昨年11月の兵庫県知事選挙では、広報に関する炎上が相次ぎました。本件は公職選挙法違反を疑われている最中ですが、やはりオンラインの世界では、ひとたび情報が拡散されると、ものすごいスピードで広がってしまいます。炎上時に大事なのは何と言っても初動です。リスク管理とは準備しておくこと。
まず様々なコミュニケーションにおいて、その反応を想定しておくことが肝要です。発信したことに対して想定していたことが起きたら、プランAで対応しよう、といった準備・対策をしておくことは、どんな企業でもやっておくべきでしょう。
【炎上を最小限に抑えるヒント】
例えば、社内でリスク管理のガイドラインを作るなど、守りの広報のプライオリティを上げていく必要があります。これは会社の規模の大小に関わらず、どんな企業も必要です。にもかかわらず、やはり知名度を上げることや、商品をより多く売ることのニーズの方が高く、リスク管理まで手が回らないという企業が多いのも事実でしょう。だからこそ、日頃から透明性のあるコミュニケーションを心がけておくべきです。
ステークホルダーにとって、日頃から物事を包み隠さずコミュニケーションしてくれている企業という認識があれば、仮にその企業が不祥事を起こしたとしても、「きっと真摯に対応してくれるだろう」という期待が生まれるのではないでしょうか。
炎上や不祥事が起きたときに、世の中がその企業をどう評価するかは、日頃のコミュニケーションで結果は変わってきます。故に、透明性のあるコミュニケーションはリスク管理と並行して行うことをお勧めします。
5. オーセンシティシティー
【オーセンシティシティーとは】
オーセンシティシティー(authenticity)とは「本物志向」や「真正性」という意味です。こちらも2024年に引き続き重要なキーワードになります。PRにおけるオーセンティシティーとは、表面的なコミュニケーションではなく、企業のパーパスに基づいた、信念が伝わるコミュニケーションです。
例えば、オリンパスのシュテファン・カウフマン社長(当時)が違法薬物購の疑いで昨年10月に辞任したケースを挙げましょう。オリンパス社はカウフマン氏が社長を辞任したことを開示しています。開示では、その辞任の理由にオリンパス社の企業理念や行動指針を用いながら、役員として不適切であったことを説明していました。この時点(2024年10月28日)では、まだ疑いの段階で逮捕となっていないなか、その結論を待つのではなく、企業としてのパーパスや行動規範に照らし合わせ、お客様に価値を提供する会社として不適切な行為であったとの判断に至ったという姿勢に、私はオーセンティシティーを感じました。
このように、企業の判断がどこに紐づいて行われているかが納得できるコミュニケーションが非常に大事になってきます。
6. オウンドメディア
アメリカではデジタル化の影響でローカルメディアが年々減るなか、地域に密着した取材発信がない空白地帯ができてしまう「ニュース砂漠」が深刻です。日本も同様にメディアが減ってきています。全国紙だけでなく、地方紙も部数が年々減少していることが、日本ABC協会のレポートからも確認できます。
これは、今後、届けたい情報を届けたい相手に容易に届かなくなることが想像できます。だからこそ、このような潮流に対策を打っていく必要があります。自社メディアを強化し、自社のメディアから情報を直接とってもらえるように企業努力をしていくことが、これまで以上に必要不可欠になってきます。
最近では自社のニュースだけではなく、業界ニュースサイトのように、業界全体の動向を発信する企業も出現しており、各社危機感をもって対策を講じているようです。また、個人的に地方紙はその地域を拠点としている企業の情報を届けるためにも非常に大事だと思っているので、自社のオウンドメディアを強化しつつ、地域メディアと共存を目指していくような関係を構築して、その地域の生活者の皆さんに、地域に関する情報が届くような企業努力も必要になってくると思います。
7. インターナルコミュニケーション
最後に挙げるのが「インターナルコミュニケーション」です。企業の幹部の関与を強化したインターナルコミュニケーションが今後トレンドになっていくようです。
その背景には、転職や副業が当たり前の時代に突入し、社員の会社への帰属意識が薄まっていく傾向があります。そのためにもインターナルコミュニケーションが大事になってくるわけですが、さらに、そこに経営陣が社内のコミュニケーションにどの程度積極的にコミットしていくかが、従業員の帰属意識やモチベーションに影響するだろうと予測されています。
例えば社内報の編集長が社長でも良いのではないかと個人的に思っています。社長自らコミットしていることで、社員はその社内報の内容がいかに大事であるかが理解できると思いますし、幹部も社内コミュニケーションの優先順位を上げていくことで最適な人材の確保にもつながっていくのではと思います。
広報担当者は2025年、社内コミュニケーションに経営陣がコミットしていってもらうよう働きかけていきましょう。
これらのPRについて知りたい企業様は、お気軽にAStoryにお問い合わせください。
【情報ソース】
「PR Management Market Outlook (2022 to 2032)」(https://www.factmr.com/report/pr-management-market)
「Trends to Monitor in 2025 and Beyond」(https://www.prsa.org/article/trends-to-monitor-in-2025-and-beyond-ST-JAN25 )
AStoryではアマゾンジャパンの黎明期からトヨタやGoogleを抜いてトップブランドとなった実績(「総合ランキングは、「Amazon.co.jp」が初の総合首位を獲得」)をもとに、ベンチャー、スタートアップ企業の新規上場におけるPR戦略立案やPR担当者育成のサポート、パーパスブランディングの構築支援をしています。
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