事業ゴール達成をサポートする広報の戦略的KPI
先日、急成長しているスタートアップ企業のオファーを受け、その広報チームの方々にお話しする機会をいただきました。
スタートアップ企業なので世の中に新風をもたらす事業を展開している関係上、当然ながら広報活動にも悩みが多いようです。本日は、その際に質問の多かったKPIについて、AStoryが考える広報のKPIについてご紹介します。
Amazon USにはKPIがない?!
スタートアップやベンチャー、そして、会社の規模拡大に伴い広報部を新設された企業にとって、組織における広報活動の指標設定や適正な評価がわからない、という広報マネージャーや経営者の方は多いのではないでしょうか。
広報のKPIはマスコミに露出した記事の広告換算額や問い合わせの数が必ずしも有効とは言えません。また、企業の事業内容や風土によって様々であるため、以前の会社で通用していたKPIと同じ指標を持ち込んだとしても、フィットするとは限りません。
かくいう私も、Amazonに転職した当時、本国Amazonの広報スキームを導入しようと提案したところ、「KPIはない」という意外な答えが返ってきたのです。一方でAmazonの広報の信条に、「量より質を大切にする」という内容があります。提供する情報の質もしかり、掲載される内容の質も重視しています。
組織が納得する広報のKPI作り
この、”まっさら”な状態でまずとりかかったのは、以下の「企業がなりたい姿(ゴール)から逆算してみる」ことでした。
【ステップ】
グローバルミッションに沿った全体のゴールを把握
そのゴールを達成するための各主要事業部のゴール、ターゲット、チャレンジ、フェーズ、タイムライン、施策などをリストアップ
上記をベースにPRゴール、戦略、戦術を組み立てる
例えば、中長期の企業全体のゴールやチャレンジ、そして各事業の目標設定などに関して、コミュニケーションのエキスパート部隊である広報が、どう貢献できるのか、を考えます。これは数値だけでなく、以下のような定性的な指標も加えます。
各事業部のKPIを上げるコミュニケーションの変え方
お客様に共感いただける商品やサービス、企業姿勢の見せ方
また、スタートアップ企業に比較的多く直面する問題として、既存市場から横やりを入れられることもあるでしょう。Amazonでも当時、「Amazon vs 書店業界」という構図が少なからずあり、市場の共通した課題、その課題にどう取り組んでいるかなど、企業活動の正当性について社会に理解してもらうためのPR活動にも注力していました。
広報のKPIを作る上での注意しなければならないこと
その1:広報部単独で作らない
企業やその各事業部において、ビジネスゴールが何もなければ、広報部だけKPIを作っても意味がありません。たまに広報部単独で作られたKPIも見受けられますが、そのゴールが経営トップや各事業部と合意を得られておらず、結果、活動が組織内で評価されていないことが多いのです。日々の広報の努力が組織に響かないことほど悲しいものはありません。
その2:社内コミュニケーションの欠如
広報業務が総務部や秘書課といったスタッフが兼任している場合、各部署からどんなPRをサポートして欲しいのかを理解されていないことがあります。特に、今まで広報部がなかった組織に新しく広報担当者が入ったケースに多い例ですが、「広報に情報が下りてこない」「各部署が話を聞く時間を割いてくれない」というご苦労もあるようです。仲間から協力を得られないハードな環境ですね。これではKPIが成立しません。でもこれには突破口があります。
組織コミュニケーションがカギ!広報KPI成功の秘訣
まず、社内を隈なく観察しましょう。組織の中で、一番やる気のある部署、または人を見つけるのです(願わくば、会社にとって優先度の高い事業)。そこで成功ストーリーを作ります。広報とタッグを組んで行ったことが、会社にどのような効果や好結果をもたらしたのかを社内に流布し、じわじわと味方を増やしていきましょう。ある日突然、広告でもないのに他部署のサービスが情報番組で紹介されていた、とか、他部署の社員がインタビュー記事に載っていた、など実際の成功事例を目にすると風向きが変わるものです。コミュニケーションの専門部隊であるその能力を、是非組織に今一度発揮してみましょう。
キャッチボールをしないとKPIの精度は高まらない
KPIを達成することは大事ですが、実は達成できない理由を各部署も一緒に理解することが非常に大事です。
なぜターゲットメディアへの露出に繋がらなかったのか、取材や報道してもらうレベルにするには何が必要なのか、といった外部の評価を社内全体もしくはその事業部と共有し、次期KPIに反映させることで、自ずと競争力が高まるのです。
また、企業経営は様々なステークホルダーに影響を受けます。KPIも期の途中で指標を変えたり、追加することもあれば、前年では評価されたことが、今年度は評価されないこともあります。企業のフェーズや情勢に柔軟に対応しながらも、主軸である「企業がなりたい姿(ゴール)」を定点観測して広報としてのKPIの精度を高めていきましょう。
組織の中における広報部は情報を管理する部門でもあります。だからこそ正しいKPIが作れ、経営戦略にのっとったPR活動が可能になり、そのコミュニケーション活動が企業の成長に寄与するはずです。
AStoryでは戦略KPIの策定をはじめとしたPR戦略立案のサポートも承っております。お問い合わせはコチラへ。