ブランド力を引き上げるコミュニケーション戦略
前回の記事で、「社会との関心を繋ぎ合わせることがポイント」というお話をしました。
前回は、広報担当者が時代を映す鏡ともいえるメディアに対して、どう伝えるかを中心にお届けしましたが、今回はインナーブランディング(企業のミッションやビジョン、事業のゴールを従業員に理解浸透し、アクションさせるために行う啓蒙活動)によって得られる効果について、その事例と手法を解説します。
Amazonがブランド・ジャパンで1位を獲得するまで
2016年に、Amazonは日経BPの「ブランド・ジャパン」で初の1位となりました。
2000年に日本でサイトを開設してから16年目にして、⼀般消費者による評価が最も高いブランドとして認知されたわけですが、日本に上陸した当初から広く認知されていたわけではありません。その間には、まさに「社会との関心を繋ぎ合わせる(調和させる)」コミュニケーションを、社内に向けて地道に積み重ねてきたのです。
Amazonが認知されるためにやったこと
Amazonには「グローバルミッション」、いわゆる企業としての存在意義が2つあります。
1つは、「地球上でもっともお客様を大切にする企業」
2つめは「地球上でもっとも豊富な品揃えを提供する企業」です。
一見すると、当たり前でどの企業でも謳っている社是のようですが、Amazonはホームページに掲げるだけにおさまりません。
Amazonではこれを社内で徹底して追求します。あらゆるコミュニケーションで言及します。取材の度に冒頭で引用するのですが、飽きられてもしつこいのも承知で毎回お伝えしています。もちろん、これは広報部に限ったことではなく、すべての従業員がこのグローバルミッションを意識しています。
インナーブランディングにおいて、”刷り込み”は非常に重要です。刷り込みを繰り返し、丹念に行うことで、正しく理解され、ブランドを育むことに繋がるのです。
ブランド(企業)のミッションを具体的にアクションに繋げる3本の柱
このグローバルミッションは社会の関心(求めること)に基づいています。お客様の求めることの1つに「豊富な品揃え」があり、それを実現していくことで、「お客様を大切にする」ことに繋がると信じています。
そして、Amazonにはそのミッションを実現するために、「品揃え」「低価格」「利便性」という3つ指標があります。
社内会議でもサービス開発においても、常に自分たちの目の前の仕事に、この3つのいずれかに繋がるよう意識するのです。
これらを、Amazonらしくイノベーションをベースに強化していくわけですが、もちろんコミュニケーションにおいてもこの3つは常に引用します。
例えば、新商品の発表をメディアにリリースする場合、一般の会社ではそのスペックの優位性や先進性を主張することが多いでしょう。Amazonでは、それよりも、その新商品が3つの「品揃え」「低価格」「利便性」のどの強化に該当するかに必ず言及するのです。
【Amazonインナーブランディングイメージ】
ブランドと社会との関係が調和するために
インナーブランディングに注力し、対外コミュニケーションで徹底して社会の関心事との調和を追い求めていった結果、消費者が他社ECサイトと比較したAmazonの利点(*1)において、まさに「品揃え」「低価格」「利便性(配送料が無料、サイトの使いやすさなど)」が評価されたのです。Amazonの従業員が常々訴求してきたことが、消費者の評価と一致した瞬間でした。
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*1:「Amazonの利用に関する調査結果」(東洋経済・NTTコム リサーチ共同調査)